内容説明
「十人相手に一人でケンカに行くんが不良で、一人相手に十人で行くんが非行。それを見てんのが金持ち。うちのお父んが言うてたわ」一人っ子ヤンチの父は、バクチ好き酒好き女好きの仕事嫌い。一家を支える働き者の母はそんな父に愛想を尽かすと家出する。ロクデナシの大人達と家庭に問題アリの友達に囲まれ、女子にときめきながら「不良少年」デビューを果たすヤンチのハートじんじん成長物語。
著者等紹介
中場利一[ナカバリイチ]
1959年大阪府岸和田市生まれ。地元の工業高校を中退後、様々な職を経て、94年『岸和田少年愚連隊』でデビュー。以後『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』『岸和田少年愚連隊 望郷篇』『どつきどつかれ』等を刊行し、いずれも映画化されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いこ
83
主人公ヤンチ(小五)は、大変な環境に育つ子供だ。おとんの一夫は、博打をし、女遊びをし、十日くらい家に帰ってこない。それを受けて、おかん静子は家出を繰り返す。でも、ヤンチは悪友と共に明るく強く生きている。おとんに似てケンカも強い。ちなみに、この地域では「子供のケンカに親が出まくり」だ。「親は子供に干渉するもの。そのかわり世界中が敵になっても守ってやる」一夫だって、子供のカタキはちゃんと討つ。そういう大人たちの姿勢はいいなぁと思う。ダメなおとん一夫だけど、こんな大人にちょっと憧れてしまう私なのだった。2022/12/05
うりぼう
45
心が疲れると中場さんの本が読みたくなる。イケモト君の両親はマキ先生に「医者と坊主の結婚」と例えられ、ヨコワケは「相手のことを思うからこそ、許さへんのも、モッケーちゃうか」と父を沈没させ、しょっぱいオムライスができる。そのヨコワケは、コウノトリの卵で、タンベは、兄弟がありながら一人っ子。非行の親でも兄弟のあるよっちんが、うらやましい不良のヤンチとヨコワケであった。金持ちでも、貧乏でも一人っ子は、大人の中でモッケーにはげむ。「泥だらけの天使」と「オッケー・モッケー」に落涙。2010/02/27
takaC
43
いいね、そういうポケッツ・チルドレン。重松氏の解説とセットで完全版と呼びたいかも。2014/07/12
10$の恋
39
大阪の泉南っちゅう"男らし〜い地域"に、小5のスゴく単純で元気な男の子が居ったとさ(=ヤンチャクレ)。その父親はもっと豪快やったとさ(=ヤタケタなお父ん)。時代は昭和のど真ん中、漁師町で起こるアホみたいな日常譚や。大阪らしいドタバタと懐かしい単語がポンポン出てきて、私の記憶箱を引っ掻き廻しよる♪『本気の喧嘩せなホントの仲良しになれるけぇ!ボケ』、やること無茶苦茶やけど、会話はめっさカイラシイねん。あの頃はみんな体温が高かったなぁ。町が生き生きしとったわ!一冊丸ごと「大阪のエキス」て思てもろてもよろしいで♬2022/11/17
がるっち
8
巻末の解説が重松清で、あぁもしかして懐かし物語なのかなぁ、って思ったのだが、違った。この方言といい、時代背景は私の子供時代と重なるだろうに、かなり世界が違う。子供を守るのに怒鳴りこんでくる親とこない親が書かれた「透明人間」で、私の夫はミヨシの父みたいに言うだけで何もしてくれないだろうなぁ、だから私一人で怒鳴りこむだろうなぁ・・・。一夫ら、昨今いない男達じゃぁないのかな。暴力的だけど、一方的じゃないっていう。子供たちはしっかし劣悪な環境で生き延びてきたんだなぁ。なんだかんだ言って良かった。2012/01/13