内容説明
昭和初期の東京・上根岸。日本舞踊の名門梶川流の師匠を母とする異父姉妹。家元の血を享け、踊りに天賦の才を見せる妹の千春の陰で、姉の秋子は身を慎んで生きてきた。しかし戦後の混乱期、梶川流の存亡を賭け、秋子が進駐軍の前で挑んだ驚くべき舞台が彼女の人生を予想もつかぬ方向へ導いていく―。伝統と因襲の世界で生きる女たちの苦悩と希望を描く、波瀾万丈の人間ドラマ。傑作大河長編。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年和歌山県生まれ。東京女子大学英文科卒業。56年『地唄』で文壇デビュー。以後、話題作を次々と発表し、一躍流行作家に。1984年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小梅
85
有吉佐和子の描く女の内面の奥の奥の描写が素晴らしい。日本舞踊の名門「梶川流」の家元が父親の義父妹の千春の陰のような存在の姉秋子。素晴らしい舞台を観終わったような読後感。続けて続編の「乱舞」を読みます。2017/08/27
ソーダポップ
33
連舞(つれまい)、日本舞踏の世界を舞台にした長編二部作の一部作目。女三人、三つ巴の愛憎ドラマ。日本舞踏の家に生まれた秋子の苦労を描いたこの話も、素直に感動して読めない甚だ微妙な物語である。身勝手な母・寿々、男としてどうなのか疑問を持ってしまう猿寿郎、さらには、主人公・秋子の言動に共感出来ず、嫌な気分になってしまうのも事実。だからこそ人間ドラマとして、リアリティある深い話になっているとも思う。登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し動きだす、50年以前の小説ですが古さを感じさせない素晴らしい著書でした。2023/04/02
Yu。
27
それでも母親からの愛情が欲しかった… 舞踊界で生まれ育ち、家元の血筋に翻弄される哀しき主人公の幼少時代から約20年もの孤独や葛藤、そして変貌ぶりを戦前から戦後という時勢に被せて追っていくヒューマンドラマ。これはとてもいいですね!!我々の知る華やかな表舞台とは程遠いお家の裏側を見せつけられながらも次第にそのダークでドライな人間模様に魅了されていく。さあどうなる“梶川流”、今後の彼女らの一挙手一投足から目が離せない。2015/08/28
蛇の婿
24
いや面白い話でした!主人公の置かれた立場がなかなか辛く、序盤は少しとっつきにくさがありましたが、太平洋戦争が始まったあたりから徐々に引き込まれ、終戦からラストまでは一気でした。…更にまあその、日本舞踊のお師匠さんの娘という設定自体も、個人的な私の人生の古傷にかかわるものがちょっとあったりもしなくもなくて感情移入がもう凄まじくゲフンゲフン!!……初有吉佐和子です。これはいい本でした!2014/11/06
taku
21
華やかな芸の舞台裏は、厳しく特殊な世界。踊りという魔物から逃れられない人々の痛みと悲しみを糧にして、流派は守られる。美しき舞を求めて。血筋に固執する母。踊りの才を持ち母の寵愛を受ける妹。踊りの才はなく母の愛も受けられない姉。周囲から軽視されても、人間関係が歪んでいても、運命を受け入れて生きる姉の姿は痛々しい。それでも踊りを愛し、妹を愛し、母の愛を欲した。波乱を予感させる始まりと、舞い踊って抑圧から開放される終わり方がいいな。言葉が調和して整った文章もやはりいい。2016/05/16