内容説明
宿題、勉強ああ嫌だ…机にむかうフリをしながら現実逃避のためにページを繰った少年は、いつの間にか物語の主人公として大海原にこぎだすはめに。そこは奇妙でハチャメチャな別世界。元の世界に戻るためには、物語の中を逃げ続ける作者を捕まえなければ!退屈な日常をがらりと変える豊かな空想の世界。大人から子どもまで、読み始めたらとまらない奇想天外なファンタジーが新装版で復刊。
著者等紹介
北杜夫[キタモリオ]
1927年5月1日東京生まれ。斎藤茂吉の次男で本名は斎藤宗吉。東北大学医学部卒。処女作は『百蛾譜』。60年『どくとるマンボウ航海記』を発表し、一躍人気作家となる。同年に「夜と霧の隅で」第43回芥川賞受賞、『楡家の人びと』で第18回毎日出版文化賞、『輝ける碧き空の下で』で第18回日本文学大賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mm
34
子どもの頃に読んだ「ボッコちゃん」を読んだら、ついつい勢いで、やはり子どもの頃に読んだこの本を再読。再再読かな。文明は発達しすぎるとよろしくないということを悟った土人は、研究はするけど、実際に使う技術はごく限られたものにしているという。エンジン付きの船は使用しないけど、原子力発電所を持っているという記述に時代を感じた。原子力=最新技術=明るい未来が、まるで自明なことのように受け入れられていた。昔の本を読んで、その時代の雰囲気をもろにかぶっていると感じる事は多い。しかし、星新一さんはどこか時代を超えてる。2021/10/29
扉のこちら側
31
初読。ハチャメチャな展開の中に、はっとさせられる一文。「利口になったりバカになったり、それが人間というものだよ」「わしたちはあんたたちが、土人をバカにしている精神が気にくわない。ハダカで暮らしている者を見ると、自分たちより劣った人種だときめこんでしまう」2012/11/26
seraphim
30
初版が1977年の児童書。冒頭から驚きの展開。キタ・モリオ氏のそんな原稿を本にしちゃうなんて、出版社もそうとうオチャメだ。ネーミングセンスがデタラメで愉快。なんにもできなかった少年クプクプがどんどん成長していくのが良い。算数は苦手かもしれないけれど、クプクプ少年はけっこう博識だと思う。とても大変そうだから一緒に冒険したいとは思えないけれど、気のいい仲間達との船旅は見ていると楽しい。最後にたどり着いた島に住む人々の生き方はすごい。現代人への皮肉とも取れる。便利で楽なことに流されがちな自分を少し反省した。2014/05/29
ゆう
24
少し古い作品だからか、言い回しが昔読んでた児童書とか教科書のようでした。でも、4ページしか書いてない小説の世界に入り込んでしまって船乗りになっちゃうっていうのは楽しめました。優しい言葉だけどどことなく厳しさがあります。プクプクと何度読んでしまったことか…。クプクプ、クプクプ。これは夏に読むといい作品です。2013/07/26
きなこ
23
勉強嫌いの少年がふとしたことで物語の中に入り込んでしまいその主人公として個性豊かな仲間たちと航海をする話。何と言ってもキタ・モリオ氏には笑わされてしまった。ヌボーの「いやなことや苦しいことががまんできなければ一人まえの船乗りになれはいからな。いいかね、クプクプ、海は美しくやさしいときもあるが、とてもおそろしく冷たくなるときもある。おまえはだんだんと強くならなくちゃいけないんだよ」というセリフが好きだった。当たり前のことのようだけど私たちがつい忘れがちになってしまうことを思い出させてくれる本。2013/08/08