内容説明
初恋の女性と結婚した男。がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出される。幸せにするために頑張ってきたのに、なぜ―表題作ほか、不倫を重ねる元同級生や、親に内緒で初めて外泊する高校生カップルなど、温泉を訪れる五組の男女の心情を細やかにすくいあげる。日常を離れた場所で気づく、本当の気持ち。切なく、あたたかく、ほろ苦い恋愛小説集。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968年長崎県生まれ。97年「最後の息子」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2002年『パレード』で山本周五郎賞を、「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞。07年『悪人』で毎日出版文化賞、大佛次郎賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
酔拳
230
5ヵ所の温泉を訪れる5組のカップルの短編です。カップルといっても、恋人どうしだったり、結婚しているけど、離婚をきりだされていたり、不倫していたりと、それぞれ、事情をかかえたカップルを、吉田修一 流で、うまく、人間関係を表現しています。どうしてこんなに、うまく表現できるのか?ため息がでてしまいます。5ヵ所の温泉地のうち4か所は行ったことがないところなので、機会があればいってみたいと思わされました!2016/11/23
hit4papa
199
実在する温泉宿で繰り広げられる、5組のカップルの物語。湯煙の中に人生の機微が透けて見えるような作品集です。突然離婚を切り出された夫「初恋温泉」。ダブル不倫の顛末は「ためらい温泉」、迷いの中にいる中年男性「風来温泉」、高校生カップルが初々しい「純情温泉」。お気に入りは、結婚目前の二人の一夜を描いた「白雪温泉」。ランプのように温かみのある素敵なお話しです。ホンワカあり、ほろ苦ありで、身体の芯までじわーんとなるのが、”吉田”温泉の効能でしょうか。2016/09/02
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
183
んっとね、…んっと、温泉行きたくなりました。寒い時期、やっぱり温泉っていいですよね(´˘`*)雪見風呂…温泉宿で年越しは永遠の憧れ♡♡ でも一緒にお宿に泊まってる人が、こんな風に離婚寸前ですれ違ってたり、不倫カップルだったり…なんて考えたくないなぁ。みんなしあわせな人たちが集ってるって思いたい。だって特別な場所だもの。それぞれ実際にある旅館を舞台にしてあるんだけど、表題作(離婚寸前夫婦)が惜しまれながら星野リゾートになった宿で、今は星野リゾートの宿も休業中ってなんか因縁を感じてしまいました。2019/12/12
kaizen@名古屋de朝活読書会
166
温泉を題材にした短編集。ほのぼの,ぎすぎす,ゆるゆる。雰囲気は少しづつ違うが、まったりとしたり,むっつりとしたり,淡い色とりどり。回顧録のようでもあり,間接的な感情表現。初恋温泉、純情温泉、白雪温泉、風来温泉、ためらいの湯の5話。2013/09/25
mura_海竜
161
吉田修一さん初読み。中古店。温泉にまつわる、全5編の男女の短編集。熱海「蓬莱」、青森「青荷温泉」、京都「祇園 畑中」、那須「二期倶楽部」、黒川「南城苑」。湯の中は会話も日常と違う。湯上り後、美味しいものを食べたくなります。音であったり、触感であったり、嗅覚も含め、五感も敏感になるような気が。ゆっくりと何時間もかけて、温泉につかりたくなりました。あんまり覚えていないけれど、ANAか何かのフリーペーパーで、最近の軽井沢は騒々しい(本当は何かと対比していたと思う)、と言っていらした作家さんが吉田さんだったかな。2015/04/14