内容説明
資源も富もない、小さな都市国家ローマは「衆知を集める」という共和政の利点をフルに活用することによって、地中海世界を制覇する。しかし、勝者となったローマも「制度疲労」だけは避けることができなかった。この危機を乗り越えるべく、不世出の指導者カエサルが採った帝国方式とは―国家盛衰の法則を探りつつ、今日の日本を考える著者渾身の一冊。
目次
第1章 なぜ今、「古代ローマ」なのか
第2章 かくしてローマは誕生した
第3章 共和政は一日にしてならず
第4章 「組織のローマ」、ここにあり
第5章 ハンニバルの挑戦
第6章 勝者ゆえの混迷
第7章 「創造的天才」カエサル
第8章 「パクス・ロマーナ」への道
第9章 ローマから日本が見える
特別付録 英雄たちの通信簿
著者等紹介
塩野七生[シオノナナミ]
1937年7月、東京に生まれる。学習院大学文学部哲学科卒業後、1963~68年にかけてイタリアで遊びつつ、学ぶ。68年より執筆活動を開始。主な著書に『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(毎日出版文化賞)、『海の都の物語』(サントリー学芸賞)など。70年よりイタリア在住。92年より、ローマ帝国の興亡を描く『ローマ人の物語』に取り組む(2006年、全15巻で完結)。2002年、イタリア政府より国家功労賞を授与。07年、文化功労者に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
55
こちら「改革」をキーワードに帝政樹立までのローマ史を描き、そこから日本という国を見てみよう!という趣旨の本なのだが、今(刊行時)の混迷した日本を何とかしようとした際にこの古代ローマ史がヒントになる!との事で色々と挙げている。そしてそれを率いるリーダーの資質についても述べている。本の最後にある「特別付録」の「指導者に求められる資質は次の五つ。知力。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志」に納得。日本の指導者に多いのは周りの取り纏め役であって組織を率いる指導力というものに欠けるらしい。なるほど!2017/07/12
カザリ
46
急ぎ足だったけれど、ローマ人の物語は体力時間ともに消耗してしまうからこのダイジェスト版はよくまとまっていてローマ史の概観を知るにはよかったwとはいえ、ハンニバルもカエサルも実はブルータス(共和制創始者)、アウグスティヌスもローマ人の物語VERで読みたいと思った。。と思ったとたんに遠い目になる。。最後の付録通信簿は面白かった。塩野さんのものの見方、勉強になる!まさに、リアリズムを追っていった作家さんだなあ。日本に対する言及はやはり、高度成長期から政策転換できなかった日本という意味で衆目の一致するところw2015/09/20
扉のこちら側
33
初読。元老院と自民党の共通点、痛みを伴う改革など、ローマを通して今日の日本を考えるという視点がおもしろかった。「読書とは自分一人の実際の人生では知りえないことも知り、会うこともできない人に会える手段です」2012/12/12
taku
27
塩野さんのローマ史は、わかりやすくて面白い。で、カエサルびいき。ローマがいかにして版図を広げ隆盛を誇るに至ったか。建国から帝国期の初期まで、時代の流れを追いながら、指導者、リーダ達を論じている。そして日本を振り返る。確かに現代においても偉人達に学ぶべきところがある。が、日本に限らず、今の世界情勢やバランスの中では天才が現れたとしても習うのは難しいかもしれない。巻末の英雄たちの通信簿も面白いな。2017/05/31
イプシロン
24
ギボン『ローマ帝国衰亡史』を読む予習としての再読。塩野さんの人物評価の切れ味の鋭さに改めて舌を巻いた。が、それはあくまでも「政治」的リーダーへの視点という切れ味であり、人間存在に寄り添うことを欠いていると思えた。確かに哲学や宗教に対しての「法」の優位性は理解できる。塩野さんが語っているように、法により人は機会の平等を得られる。だが法や政治によって貧富の差は解消できない。そしてそこにこそ、人間精神の平等を説く哲学や宗教が必要なのではなかろうか。政治(家)とはかくあるべしと言いたい気持ちは理解できるのだが。2018/05/08