内容説明
推理小説や探偵小説だけがミステリーではない。人間の心を深くそそる謎、それが本来のミステリーである。ユーモラスな語り口の中に非日常の世界をのぞき見る夏目漱石「琴のそら音」、真相のありかそのものを問う芥川龍之介「藪の中」、理化学トリックの幸田露伴「あやしやな」、思いもよらぬ犯罪を暴き出す大岡昇平「真昼の歩行者」など、名作九篇を厳選。
著者等紹介
山前譲[ヤママエユズル]
推理小説研究家。1956年、北海道生まれ。北海道大学理学部卒業後、会社員生活を経て文筆専業となり、鮎川哲也に私淑する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mina
37
文豪9人のミステリー。夏目漱石『琴のそら音』は2度目。怖いと思い込んでしまった男の細かな心理描写と最後の安堵感がやはりいい。直木賞受賞作 柴田錬三郎『イエスのすえ』は、身内の女達に生涯にわたって振り回される生真面目な男がとても哀しい。彼に幸せはあったのか…。大佛次郎『手首』と岡本綺堂『白髪鬼』はベタな怪奇で面白かった。芥川龍之介『藪の中』、これも2度目なのですが、真相は全く見当がつかず藪の中のまま…。どの作品もハズレがなく、とても楽しめました。2014/08/14
みやび
30
ミステリーと言っても様々な手法があって実に幅広く、どれも飽きずに楽しめた。岡本綺堂の「白髪鬼」と芥川龍之介の「藪の中」のみ再読になるが、どちらもやはり惹き込まれる面白さ。夏目漱石の「琴のそら音」と大佛次郎の「手首」、そして幸田露伴の「あやしやな」が個人的に好みだった。特に幸田露伴は、こんな話も書くのかと新鮮な驚き。文語体なのでかなり読みにくいものの、探偵小説として非常に興味深く読む事が出来た。明治の空気を感じられるのも良いです。文豪と呼ばれる人達はやはり読ませ方が違う。2020/10/03
KAZOO
20
夏目漱石というといつもこのようなアンソロジーには夢十夜が入ると思っていましたが、今まで読んだことがない「琴のそら音」が入っていました。芥川のは「藪の中」で」解釈次第でどのようにでもなるということでこれは定番です。そのほか文豪の様々なタイプのミステリーで楽しませてくれます。2014/01/22
rosetta
17
ミステリーと言っても推理とは限らずホラーやリドルストーリー等不思議な話全般が収められている。『文豪の探偵小説』というシリーズもある様なのでそちらも興味深い。夏目漱石「琴のそら音」(明治38)大佛次郎「手首」(昭和4)岡本綺堂「白髪鬼」(昭和3)山本周五郎「出来ていた青」(昭和8)大岡昇平「真昼の歩行者」(昭和30)幸田露伴「あやしやな」(明治23)久米正雄「嫌疑」(大正3)柴田錬三郎「イエスの裔」(昭和26直木賞)芥川龍之介「藪の中」(大正11) 因みに編者は大学の先輩との事(8年上の理学部卒)2022/02/06
NDS
17
文豪ブームにあやかって。夏目漱石や芥川龍之介をはじめ、明治から昭和の文豪の短編ミステリー小説が掲載されています。 謎をロジックと証拠を用いて謎を解くのみにあらず、不思議なものを不思議なままに描いたり、世の不合理を描いたりするのも一種のミステリーかと思いました。2016/05/15