内容説明
ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーを収録。
著者等紹介
三崎亜記[ミサキアキ]
1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年、「となり町戦争」で第十七回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
292
読メ登録前に読んだのを、『逆回りのお散歩』に『となり町戦争』のスピンオフがあるので再読しました!戦争を行政の事業の一環にしたお話!当時、読んだ時はなんて斬新で面白い物語なんだろうと思いました。約10年の歳月を経ても、色褪せることなく、今でも面白く読める作品はそう簡単にはないと思います(^^)三崎亜記さんの作品は面白いですね(^^)見えないものとの戦いやら、見えないものと戦うというような作品は当時、そんな作品がわりと多かった記憶が…。例えば有川浩さん『塩の街』とか…(^^;)2016/06/12
hiro
231
作品を読んで、いつも以上にこの作品で、作者が何を言いたいのか考えさせらた作品だった。リアリティのない“戦争”に巻き込まれていく主人公を見ていると、こんなことで戦争に加担させられることは決してないだろうと思う。しかし、これほど極端ではないが、本人たちが気がつかないうちに、戦争とは知らず知らず加担させられていくことものではないかとも思った。また、小説には珍しい、詳細な各種書類、規定類などは、元地方公務員だった作者のブラックユーモアなのだろうか。2011/08/02
ntahima
220
夢の中で再会した懐かしい人と、ふたりの将来について語り合っている最中に目が覚めたような損失感。文豪の掌編『白夜』の読後感を想う。「隣町との戦争」というのはSF短編では時々見かけるが三百頁近くなると結構難しいテーマである。長く書けば戦争に伴う「人の生き死に」の問題から逃げられないからである。この戦争の物語は静かに始まり山場もなく淡々と続き、突如夢から覚めたかのように終わる。感情を抑えた香西さんの話し方から垣間見える想いと、不条理を現実として、そのまま受け入れる主人公の姿が忘れられない。上質のラブストーリー。2011/01/05
青葉麒麟
189
題名からして判るように奇抜なファンタジーだなぁと思った。目の前で銃撃戦が繰り広げられるわけでも無く、町の何処かで誰かが戦死してるんじゃ危機感がないなぁ。戦争の意味合いがお互いの町の地域活性化に繋がるってのは何とも皮肉。一寸ダラダラしてたように感じた。2013/05/12
扉のこちら側
187
文芸書で初読し文庫で再読。気配だけで確かに進んでいく戦争が怖かった。「戦争というものは、様々な形で私たちの生活の中に入り込んできます。」遠い国の戦争も、無関係ではないのだろう。2013/02/22