内容説明
「あの文豪にこんな探偵小説が!」と、読者を驚嘆させるアンソロジー。“プロパビリティーの犯罪”を初めて扱った谷崎。故殺か、事故かを追及した鴎外、志賀。静かに迫りくる恐怖を描いた三島…。「謎」は殺人事件にとどまらず、人の心の奥底にこそ存在する、と、信じる巨匠たちの生み出した探偵小説の傑作の数々。
著者等紹介
山前譲[ヤママエユズル]
推理小説研究家。1956年、北海道生まれ。北海道大学理学部卒業後、会社員生活を経て文筆専業となり、鮎川哲也に私淑する。アンソロジーの編纂多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
68
名だたる文豪が執筆した作品中から探偵小説の要素を含むものを収録したアンソロジー。探偵が事件に遭遇し犯人を見つけ出し解決する、といったミステリの大要素は全く無いが、どれも様々な事件を通して人生の不可解さを覗き込むような構成になっている。この手のアンソロジーではマスターピースともいえる谷崎の「途上」は、やはり何度読んでも感服。この手の作品だと乱歩の「赤い部屋」と並んで、未だこれを超える作品は出てないんじゃなかろうか。他にも日常の謎「オカアサン」や「復讐」等、既読のものも多いけど安心して読める作品が揃っている。2021/08/02
goro@80.7
57
実際に探偵が出てくるのは谷崎潤一郎「途上」だけなのでミステリー集かな。しかしどの作品にも驚いた。泉鏡花「外科室」は一度読んでも分からなかったわ。川端康成「死体紹介人」はなんとも虚しいかぎり、森鴎外「高瀬舟」の喜助は今日にも通じる問題だろう。古典は敬遠してたけど読まなきゃわからないもんだわね。人の心はミステリーやなぁ。各作家の入門編としてもたのしめる一冊でしたわ。2017/11/05
Mina
41
文豪9人の短編集。泉鏡花『外科室』、うわ言で秘密を言うことを恐れ、手術での麻酔を頑なに拒む伯爵婦人。そして医学士・高峰はメスを執る。命を懸けてまで秘密を守る夫人の描写が凄まじく美しい。『「忘れません」その声、その呼吸、その姿、その声、その呼吸、その姿。伯爵夫人は嬉しげに…』震えます。その他、谷崎潤一郎『途上』、三島由紀夫『復讐』等、贅沢で謎だらけの1冊でした。2014/09/15
TANGO
34
誰もが知っている、日本の文豪のミステリ。探偵小説、と銘打っているものの、探偵が出てくるものはほとんどないが、9人それぞれの特徴があらわれていて、ミステリ作家、と呼ばれた作家ではない人のミステリは興味深く、読みごたえは流石。美しい日本語、漂う緊張感、迫る謎。堪能しました。2015/07/22
みやび
33
探偵小説と言えるのは谷崎潤一郎だけでしたが、さすがに文豪の作品だけあってどれも非常に面白く読めました。特に気に入ったのは、谷崎の「途上」と三島の「復讐」太宰の「犯人」かな。「途上」は乱歩が絶賛したそうですが確かに好きそうな展開(笑)「復讐」は最後の一文に思わず「怖っ」と口にしてしまった。舞台で観てみたい作品。「犯人」は太宰らしい結末。泉鏡花の「外科室」も文体は古いがその分読ませてくれます。表現の美しさに惹き込まれる感じ。作家それぞれの色がしっかり出ていて、心理描写の巧みさが読後まで後を引きます。2019/12/26