出版社内容情報
志乃子が貰い受けた手文庫には、敗戦後に命懸けで38度線を終えて帰国した、ある家族の手記が入っていた――。数奇な運命が連環し、ひたむきに生きる人々の、幸福と幸運の連鎖から生まれる、奇跡のような物語。(解説/堀本裕樹)
内容説明
志乃子は一個の鼠志野の茶碗をきっかけに、骨董の世界へ足を踏み出していく。茶碗と同時に貰い受けた手文庫には、小さな手縫いのリュックサックと、敗戦後に命懸けで、北朝鮮から三十八度線を越え帰国した、ある家族の手記が入っていた。残りの人生で何が出来るかを考えた彼女は、その持ち主を探し始める―。ひたむきに生きる人々の、幸福と幸運の連鎖から生まれた、喜びと希望の物語。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年3月6日兵庫県生まれ。77年『泥の河』で第13回太宰治賞を受賞しデビュー。78年『螢川』で第78回芥川龍之介賞、87年『優駿』で第21回吉川英治文学賞を受賞。2004年『約束の冬』で第54回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門を、10年『骸骨ビルの庭』で第13回司馬遼太郎賞受賞。また同年、紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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aika
52
ゆっくり、一滴一滴としたたる水の力が石のかたちを変えていくように、誰しもが持つ人間の静かなエネルギーを、素直に信じてみたくなりました。自分以上に見せることも、以下に見せることもない、ありのままの主婦の志乃子さん。そんな彼女の素敵な人柄が、とある骨董品との出会いを惹き付け、戦後、混乱の朝鮮から命からがら逃げ延び、数百人の日本人の帰還を手助けした横尾さんの手記の真実が明らかになった時…。時代を超えて人は人と繋がることができ、極限状態でもこんなに人は強く優しく生きることができるのか、と胸がいっぱいになりました。2019/03/03
まーみーよー
33
じんわりと心に響く良書。主人公の志乃子というフィルターを通して著者、宮本氏の想いを感じるような一冊。志乃子が女友達との旅で得た「他者への畏敬」。名のない庶民の「凄さ」を素直に感じとる志乃子もまた、他者である友人沙知代や周りの人々に良い影響を与えている。彼女の強さは難所をくぐり抜ける水のかたちに例えられる。素直でしなやかな強さが幸福の連鎖を生む。そして、著者のあとがきがとても素敵だった。2021/03/09
きのこ
26
実際にあった手記との合作なのか。幸福への流れを書いただけあって物事がどんどんいい方向に進んでいく。読んでいて楽しい本だったけどもう少し先を読みたかったな。読後感はイマイチっす。2017/04/27
しのぶ
26
上下巻セット読み。水の様に形を変えながら流れていく人生かな。邪心のない主人公のせいか全てが良い方へと転がっていく話の展開はちょっと出来過ぎかなと思いつつも楽しんで読了。きっと善い人には善い友と幸せが連鎖でやってくるものだ。2015/10/14
Mizue
23
とても良かった。50才の志乃子と、友人たち、新たに知りあっていく人たちがみな善き人で、そういう人がつながりあっていくことで幸運が舞い降りてくるという、気持ちのいいお話しだった。志乃子の、真剣にはなっても深刻にはならないところがいいなあと思う。2016/03/07