出版社内容情報
東京の下町に暮らす主婦・志乃子は50歳。近所の喫茶店で、年代ものの文机と茶碗と手文庫を貰い受ける。やがてそこから予期せぬ出会いと新たな人生の喜びが…。生の希望と、救いと発見にみちた悠々たる人間讃歌。
内容説明
東京下町に暮らす主婦・志乃子、50歳。もうすぐ閉店する「かささぎ堂」という近所の喫茶店で、文机と朝鮮の手文庫、そして薄茶茶碗という骨董品を女主人から貰い受ける。その茶碗は、なんと三千万円は下らない貴重な鼠志野だという。一方、志乃子の姉、美乃も長年勤めていた仕事を辞め、海雛という居酒屋の女将になるという。予想もしなかった出会いから、人生の扉が大きく開きはじめる―。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年3月6日兵庫県生まれ。77年『泥の河』で第13回太宰治賞を受賞しデビュー。78年『螢川』で第78回芥川龍之介賞、87年『優駿』で第21回吉川英治文学賞を受賞。2004年『約束の冬』で第54回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門を、10年『骸骨ビルの庭』で第13回司馬遼太郎賞受賞。また同年、紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aika
52
50歳を迎えた女性のチャーミングな独り言やめぐらせた思い、自身の人生について逡巡する内面の揺れ動きが、物や道具を通して目に見えるように感じられました。馴染みだった喫茶店・かささぎ堂が閉店することになり、気に入った文机や茶碗を譲り受けた主婦の志乃子さん。些細なことがきっかけで、平凡に思われた人生が静かに大きく回転していく過程を追っていく宮本文学の楽しみを、この作品でもたっぷりと味わえます。鉄は鍛え抜かれて鋼となるように、苦労や挫折を噛み締めて、人は大きくなれるとの劇中でのさりげない箴言は、心に残りました。 2019/02/17
まーみーよー
29
門前仲町に暮らす主婦、志乃子が主人公。50才になる志乃子が近所の喫茶店店主から、閉店するため店にあった茶碗や手文庫を譲り受ける。この薄茶茶碗は、実は三千万円もの価値がある骨董品であった。茶碗との出会いから志乃子の人生が少しずつ動いてゆく。人と人とが縁により繋がり、じわりじわりとストーリーが進む感覚が宮本さんならでは。そしていつものように食べ物と情景の描写に惹かれるのだ。50才という人生の岐路に立ち、志乃子が何を感じ、どう行動するのか、気になるところ。次巻へ。2021/03/08
D21 レム
27
あっ他の人もそうなのか…と思うことばかりで、やはり宮本輝だ。とてもリアリティがある主婦の日常がすみずみに行き渡り、ベースになっているから、突飛な出来事もすんなりと読める。こんなことになったら人は、家族はどう変わっていくのだろうかと、読み進む。夫は、謎の美女は、不動産店の主人と女の子は、茶碗を仲介した人は、子供たちは、そして、かささぎ堂の女主人は、手文庫の中身の親子は、どうなる?!心に「どうなる」の嵐がうずまく状態で下巻に突入。「他者への畏怖」を出してきた宮本輝に尊敬の念。この有無が人間力を分ける気がする。2015/11/03
ともこ
26
もらった鼠志野の薄茶茶碗が骨董品として価値あるもので3000万円で売れてしまう。おまけに、もらった手文庫の中から戦時中の貴重な記録も見つかる。何も知らない持ち主を探すが見つからず、記録の中の人物の消息も知れない。それらを狙う怪しげな女まで現れ・・。著者の丁寧な情景描写に心静かな読書だったが、こうして振り返ってみるとなんとハラハラドキドキな展開か!ビル・エヴァンスをBGMに下巻へと続く。2023/04/07
reading
19
心温まる宮本ワールドが展開する。いろんなエピソード、分野の話が物語に彩を添えている。 まっとうな人間は自分の瞬間的な衝動を思いとどめることができる。という箇所が印象に残った。 各登場人物が非常に魅力的。2015/11/17