出版社内容情報
ジャコバン派の精神的支柱だったマラが暗殺された。新たな政治指導者となることを求められたロベスピエールは公安委員会に加入。恐怖政治が敷かれ、王妃やジロンド派が次々に処刑されてゆく。(解説/西上心太)
内容説明
ジャコバン派の中心人物の一人で、大衆から熱狂的な支持を受けるマラが暗殺された。マラの後継者を自任するエベールが勢いを増す中、サン・ジュストら同志からジャコバン派の強力な指導者となることを求められたロベスピエールは、公安委員会に加入して恐怖政治を敷き始める。元王妃マリー・アントワネットやジロンド派の面々が断頭台へ送られ―。フランスに粛清の嵐が吹き荒れる、第15巻。第68回毎日出版文化賞特別賞受賞。
著者等紹介
佐藤賢一[サトウケンイチ]
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年『ジャガーになつた男』で第6回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。99年『王妃の離婚』で第121回直木賞を、2014年『小説フランス革命』で第68回毎日出版文化賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
47
わたしは、フランス革命での推進者として教科書などで、マラー・ダントン・ロベスピエールという3人の名前は知っていましたが、まずマラが暗殺されてしまいます。そのため混乱が加速されて、恐怖政治がおこなわれるようになります。民衆をなだめるということなのでしょう。マリー・アントワネットが処刑されジロンド派の人物も粛清されます。民衆の不満の目をほかに向けさせる、という現在のどこかの国と似ているような気がします。2015/03/01
Y2K☮
23
マラ暗殺を契機に、内憂外患から国を守るべく、疑わしきを罰する恐怖政治がスタート。迷いつつも独裁を敷き、政敵や王妃を断頭台へ送るロベスピエールは一方で心の拠り所として信教の自由を重んじる。だが権力を握ったエベールは、神を頂点に聖職者をその次に据えるキリスト教は万民の平等を謳う革命精神に反すると主張。正直頷ける点もあるから性質が悪い。サンジュストもそう。ブルジョワ限定の緊急課税とか今の日本でもやって欲しいくらい。だが彼らはあまりにも合理的で傲慢過ぎる。敵を即排除する自由の刃はやがて彼らの命も奪う。因果応報か。2015/03/26
飛鳥栄司@がんサバイバー
14
冒頭、マラがしれっと暗殺されてるわ、マリー様もサクッと断頭台だわ、ジロンド派はナレ死にもしてもらえないなどと扱いが薄いなぁと思いつつ、ロラン夫人だけちょこっと出番あり。マラ亡き後、市民の拠り所となったエベールが台頭し始めたけど、彼自身の政治的思想が希薄だから暴走にしか見えない。サン・ジュストの暗躍といい、ロベスピエール、ダントン、デムーランの共闘といい、革命思想のぶつかり合いというよりも、本来の支持基盤との対立構造を生むことが革命にとってプラスに働かないだろうに。市民中心の国家という革命の本質が問われる。2022/06/26
イトノコ
14
再読。マラの暗殺によりサンキュロットの怒りは歯止めが効かなくなり、恐怖政治が幕を開ける。マリーアントワネット、ジロンド派、ロラン夫人と次々と処刑され、タイトルに偽りなし。しかし、世界史の授業では恐怖政治=ロベスピエールだったが、本作では彼自身はエベール派やサンジュストら周囲に引き摺られて恐怖政治の中心に据えられている。ここからどのような展開だったか…あまり覚えていないので(ちょっと疲れてきたが)楽しみに読み進めよう。そして、かつて革命の暴走を予言したフイヤン派の雄、パルナーヴがひっそりとナレ死…。2019/09/30
タッキー
12
なんで人や組織はすぐに驕りが出るのか?今作はデュシェーヌ親爺こと、エベール派が台頭し、マリーアントワネット、ブリュソなどのジロンド派が相次いで処刑されるという寂しい、まさに粛清の嵐。処刑される程のどのような罪を犯したのか、デムーランの気持ちが分かります。特にロラン夫人は憎たらしかったですが、最後の断頭台の場面は気の毒。分からないのはロベスピエール。どうしてこのような事態にしたのか。今後、本当にダントンやデムーランと、また共に動くことになるのか、疑問です。2019/12/19