出版社内容情報
海辺の街でのほろ苦くも温かい人間ドラマ
同棲中の彼氏と大喧嘩して家出した女の子。妻との間に大きな悩みを抱え、故郷に戻った青年…。海辺の街を舞台に、人生に迷い立ち止まる人々の再生を描く、ほろ苦くも温かい小説集。(解説/吉田伸子)
内容説明
同棲していた彼氏とケンカして、家出した茜。民宿を経営する叔父夫婦のもとに転がり込むが、そこはラブホテルに替わっていて…(「海風」)。結婚して10年。ずっとうまくいっていた妻との間に、大きな悩みを抱えてしまった航。久しぶりに戻った故郷で、昔傷つけてしまった女性と再会し―(表題作)。海辺の街を舞台に、人生に迷い立ち止まる6人の男女の再生を描く、ほろ苦くも心温まる小説集。
著者等紹介
飛鳥井千砂[アスカイチサ]
1979年生まれ。愛知県出身。愛知淑徳大学文学部卒業。2005年『はるがいったら』で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のいじぃ
130
読了。同じ海が見える場所でそれぞれの思いと人生が過ぎ行く短編集。海と同じように穏やかな時もあれば波立ち荒れる時もあり、深く昏い色をしていれば淡く煌めく時もある、そんな一冊でした。先に読んだ本もそうですが、妊娠が題材になると流産がセットになるのはネガティヴな感情を乗せやすいからでしょうか。短編形式では安易に選ばれ、かつ作者の感傷と陶酔を読まされているようで好きになれません。「海風」や表題作は親の愛情と本人の成長を、「キラキラ」は素直な学生の感性を感じる事ができ好きでした。「海のせい」は無理。/まごうかたなく2016/09/07
takaC
117
最後の一編を読み終えたとき「海を見に行こう」と思ったよ。「一人で勝手に行こう」とだけど。解説者に言われるまでもなく素敵な小説だと思ったよ。惜しむらくは「あまり耳障りがよくない」という記述があったこと。表現技巧ではなさそうだったから。2013/01/10
☆ゆう☆
105
海がモチーフの短編小説。正直、恋愛小説的にはそこは彼女を迎えに行ってあげるとか、もう少し男性陣にがんばって欲しい場面もいくつかあった。だが、かえってその淡白さが現代っぽくてよかったのかもしれない。「笑う光」で女の怖さを知り「海のせい」で女のズルさを見た。恋愛って常に選択が付きまとうものだと思う。知らず知らずのうちに自分にとって都合のいい選択をしてしまっていることもあるかもしれない。だから改めて「人生に起きる出来事って、起こるまでのどこかの過程に、必ず自分の意思が関与してるのよね」と言われるとドキッとする。2014/06/01
ひめか*
97
短編で読みやすい。全て違う登場人物なのに、舞台は一緒なのかなと思わせる部分があったりもした。すごくサラサラとしてて、爽やかに時が流れていった。爽やか系は好きだけど、この作品は自分には何となく物足りなかったな…最後の『海を見に行こう』が一番好き。魔女の言葉、親父の言葉…みんな優しくて、辛くて苦しい心の内をそっと包み込んでくれるような、人の温かさを感じた。『海のせい』怜子の気持ち、恋愛経験ない私でもわかるな…別れたいけど言い出せない、尚人は優しいから離れられない。それがもどかしくて辛かった。2015/01/25
佳蓮☆道央民
80
★★★★★飛鳥井さん作品3作目。いやぁ、めちゃくちゃ良かったです!これは、6個の心暖まる恋愛短編集です。一番最初の「海風」は、なんかラブホの掃除描写がリアルすぎて、ちょっと引いたけど、笑ってしまいました。面白かったです!一番良かったのは「キラキラ」ですね。これは、もう読んでてドキドキして、少女漫画を読んでる気分に陥りました。もうハマりましたね。一番最後の「海を見に行こう」は、泣いてしまいました。命の話だったので、途中から最後まで涙が溢れてました。私もこれから色々あるだろうけど、頑張って乗り越えたいなって思2016/01/19