集英社新書
原発列島を行く

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  • サイズ 新書判/ページ数 251p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087201161
  • NDC分類 543.5
  • Cコード C0236

内容説明

日本の美しい海岸線を不気味に変容させている巨大な建築物の群れ。それが原子力発電所である。過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いてきたか。都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここに凝縮されている。日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、淡々と綴るドキュメント。

目次

中央に翻弄されつづける悲劇の村―青森県六ヶ所村
首都移転とともに進む“処分所研究”―岐阜県東濃地区
遅れてきた無謀に抵抗する漁民の心意気―山口県上関町
活断層新発見に揺れる「諦めの感情」―島根県鹿島町
おこぼれにすがる原発中毒半島の悪習―福井県敦賀市
「金権力発電所」と闘いつづける“悪人たち”―愛媛県伊方町
カネに糸目つけぬ国策会社への抵抗―青森県大間町
ハーブと塩と核のごみ―石川県珠洲市
ロケットの島に蠢く不穏な野望―鹿児島県馬毛島
臨界事故のあとにはじまった軌道修正―茨城県東海村
三○年前からつづく電力の“秘密工作”―鹿児島県川内市
貧すれば鈍す赤字市魔の選択―青森県むつ市・東通村
世界最大の原発地帯に吹くカネの暴風―新潟県柏崎市・刈羽村
矛盾噴き出す原発銀座の未来―福島県双葉町・富岡町
進出を阻止したあとの住民のダメ押し
精神を荒廃させる“植民地”経営
反発強まる地震地帯の原発増設

著者等紹介

鎌田慧[カマタサトシ]
1938年青森県生まれ。1964年早稲田大学文学部卒業。新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーのルポライターとなる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

299
本書の刊行は2001年。大震災に起因する福島第1原発事故の10年前だ。この時点では「もしも津波が発生したとき、海の水位は急にさがる。すると冷却水の供給が間に合わなくなる」と懸念していた。ところが、現実はそれを遥かに上回る未曾有の災害となった。しかも復興の見通しは全く立っていない。著者の鎌田慧は全国の原発を踏査するのだが、いずれも信じがたいほどの金まみれ。そうしなければ原発はできないからだ。欺瞞に次ぐ欺瞞だが、残念ながらこれが現在の日本の政治状況である。使用済み核燃料の行く先は不透明なまま列島周縁を彷徨う。2017/03/10

rico

86
初版は2001年出版。2011年5月の第三刷を10年ぶりに再読。冒頭の立地図。海岸沿いにずらっと並ぶ原発。その多くは、都市から離れ過疎に悩み、しかも地震のリスクが高い地域。言うなれば、札束で頬を叩きながら「迷惑施設」を「安全」だと言いつつ押しつけていったことが、この図だけでも見てとれる。著者は全国を巡りその実態を暴く。掲載された雑誌の性質を考慮する必要はあるが、本質的な構造は変わっていないように見える。あの事故を経てなお「安全神話」なしには動かせない原発を推し進める意味は何なのだろう。2021/03/13

honyomuhito

69
本書は週刊誌に連載されていたルポに手を加え、2001年に出版されたもの。福島第一原子力発電所事故の起こる、ちょうど10年前。福島を含め、全国の原子力発電所を有する地域、中間貯蔵所の候補とされていると思われる地域が出てくる。まあ、この狭い国の津々浦々に、よくここまでといった感じである。本書を読んで、私は原発について何もわかっていないということがわかった。しかし原子力発電って、わからない人間が多数のまま触っていいものなのか。https://chirakattahondana.com/原発列島を行く/2019/02/09

kinkin

66
1999年から20001年にかけて「週刊金曜日」に連載されたルポに加筆したもの。全国17箇所の原発、関連施設を取材しその現状が伝えられる。立地する際、立地後、稼働後と電力会社や国、行政は様々なやり方で住民への問題や事故の説明責任を回避する。3.11の原発事故でようやくいかに危険な管理状態でやってきたかが明るみになるが、この本はその約10年前に出版されている。もんじゅの廃炉がほぼ決定した。莫大な税金を投入した結果得ることがないまま終焉を迎える。原発が一体何なのかを考えることができる一冊と感じた。2016/09/25

モリータ

13
◆'99-'01年『週刊金曜日連載』に加筆、'01年刊。六ケ所村、東濃、上関、島根、敦賀、伊方、大間、珠洲、馬毛島、東海村、川内、むつ・東通り、刈羽、富岡、巻、泊、浜岡。◆原発や処分場(候補)のある自治体の市民は、それらと縁遠い人口稠密地の住民が経験することがないであろう、金や土地、人間関係、そして政策をめぐる峻烈な対立にさらされる。裏を返せば、彼らこそ民主主義を鋭く実感し、実践している人びと、ということになる。◆無理なハコモノ一般に言えることだが、著者も度々触れているPR館の白々しさ、残念さといったら…2022/02/14

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