内容説明
パリ在住のジャーナリストが、官庁街から高級住宅街、移民街とくまなく歩いて住民たちにインタヴューし、各々の区の個性とそこに暮らす人々の素顔や喜怒哀楽を紹介する。時に歴史解説風、時に旅行ガイドブック風、時に文学エッセー風、時に庶民の一代記風…と、四季を通して楽しく散策をしながら、パリに暮らす人がひりひりと生身で感じているパリの匂いや感触を追体験する。歴史と文化と伝統に支えられた街に、生っ粋のパリっ子と移民たちが暮らし、内と外のエネルギーがぶつかりあって、絶えずあらたなエネルギーが生まれる。そんな新しいパリの素顔。
目次
1区―サント=シャペルとパリ最高裁判所
2区―パッサージュのある街
3区―伝統とエレガンス
4区―ユダヤ人街のシナゴーグとエルサレム修道院
5区―散策、植物園まで
6区―ソレルスの通る道
7区―ロダン美術館の庭
8区―プルーストの影を求めて
9区―人形師が繰る魔法のノエル
10区―未来と過去が交差する北駅と東駅〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
439
パリの中心1区かららせん状に時計回りで外に広がっていった終点が20区。こうしてみると、たしかにパリは区ごとにそれぞれの特徴が際立っているようだ。もっとも、それを意識して書いているからなのだろうけれど。著者の浅野素女はパリ在住のフリーランス・ジャーナリスト。もう20年も前の著作だが、まったく流行にとらわれていないので、古さはない。また、8区のプルーストや16区のモディアーノなど文人との関りに言及する部分も多い。いずれの区も観光の視点からではなく、文化とそこに住む(住んだ)人たちの息吹を伝えている。2020/01/12
ネムル
9
巷色々とあるパリ二十区本のなかで、これがどう優れているかどうかは知らないが、イヴ・モンタン-シモーヌ・シニョレ、デュラスにソレルス、アポリネールにローランサンといった文化人以外にも、優雅なパリジャン・パリジェンヌ、庶民や移民の姿をエッセイ風に、一代記風、歴史解説と様々に描いているところが良い。2014/01/07
こばやし
6
2000年出版の本。パリで生きた著名人の名前がたくさん登場して、遠い国の冷たい印象の街並みに色が塗られていく感じがした。タン兄弟やタティなどのパリを構成する移民の存在も魅力的だった。サンタンヌ病院の取材は興味深かった。2020/02/02
swshght
6
これも『ミッドナイト・イン・パリ』経由で読んだ本だ。今度は現代のパリはどんな感じなのかを知りたくなった。著者はパり在住の日本人女性だ。タイトル通り、彼女はパリ二十区を一区から順に記述していく。パリの歴史、文化、芸術、社会問題を的確に挿入しながらも、時折、個人の記憶を辿っていく。この点が面白い。過去に見た景色やフランス人との交流を軽やかな筆致で描き出す。エッセイ、日記、観光ガイドとしての側面を合わせ持つ。映画好きの自分としては、やはり映画館に関する文章に心を躍らされた。「映画館が街を変えた」の章は必見だ。2012/06/24