内容説明
身体は女なのに頭脳は男、またはその反対。胎児期の性決定メカニズムの狂いから生じる「性同一性障害」は人知れぬ心の傷を「彼」や「彼女」に与えてきた。その悩みを解消すべく立ち上がったのが、埼玉医大総合医科センターの特別チームだった。原科孝雄教授を中心とした医師団の手術を追いつつ、悩みを持つ多くの実例も検証し、「男」と「女」の原点のドキュメントがいまここにまとまった。これは、性の分かれ道に立ちつくす、すべての人びとに贈る性転換医療最前線からの希望に満ちた迫真のレポートである。
目次
プロローグ 日本初、性転換手術がなげかけたこと
第1章 男と女の性はいつ決まる
第2章 なぜ性転換手術はタブー視されたか
第3章 開けられたパンドラの匣―医学界の葛藤と努力
第4章 性を越境する人々
第5章 求められる法と社会システムの整備
エピローグ 性転換手術が市民に与えた変化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
20
完全に見落していた本で読んで良かった。中の人ではなく完全に外部のジャーナリストによる本。埼玉医大での国内最初のSRSを機に関係者に話を聞き、ガイドラインが纏まって行く中で当事者がどう行動したかを前半で伝え、後半このガイドラインが出来た事によって逆に立場がなくなってしまった人々の声もきちんと取り上げる。この本ではまだ戸籍の修正はできなかったが、その後戸籍の性別を変更する事が可能になって更に問題は先へ進んだカト思いきや、最初の手術後の街角の声の女子高生の言葉のように酷い事を言う奴も増えて更に後退して(続く2014/07/18
アル中の魔女
4
性同一性障害やジェンダーについて医療や行政、法律など関係する様々な分野について広く知ることができた。今まで曖昧だったトランス・ジェンダーとトランス・セクシャルの違いについて大変よく理解できた。2012/04/25
こばく
4
性同一性障害の事を知りたくて読んだ。一口に性同一性障害と言っても,トランスセクシャル,トランスジェンダー,トランスヴェスタイトの3種類があることなどや,その人達の苦悩がわかりやすく書かれており,この問題について深く考えさせられた。ただし国内初の性転換手術のリポートの部分が長く,純粋に性同一性障害の事を知りたい自分にはそこの部分が少し冗長に感じた。しかしそこの人間ドラマもなかなか感動するものであったので,よい本を読んだと思う。2010/05/10
ジュリ
3
この本が出版された当時(2000年)はまだ性転換手術はあまり広まっていないようで、戸籍の性別を変えることもできなかった。でも、今は少し変わってきているようだ。もっと世間に広く知られて、性同一性障害の人が生活しやすくなるといい。2017/02/08
ズマ
3
性同一性障害について、基礎的な知識はこの本だけでほぼ得られるのではないか。トランスジェンダーやトランスセクシャルという言葉までカバーしているのには驚いた。当事者が身近にたくさんいる身としてはとてもありがたい本。GID当事者、その周りにいる人もそうだが、すべての人に読んでほしい本。2012/01/18