出版社内容情報
近代日本の「戦争の時代」の幕が開く
国家として最初の対外戦争で清国に勝利して以降、大陸侵攻を続け、軍国主義に傾いていく大日本帝国の姿を、萩原朔太郎や森鴎外から、久世光彦、岩井志麻子まで、古今の作家が多面的に切り取る。
著者等紹介
萩原朔太郎[ハギワラサクタロウ]
1886(明19)・11・1~1942(昭17)・5・11群馬生。県立前橋中(現・県立前橋高)卒。旧制五高(現・熊本大)、六高(現・岡山大)、慶大予科に入学するもいずれも中退。中学三年頃から短歌を詠み始める。「明星」「スバル」などに短歌を投稿。1913年、北原白秋主宰の雑誌「朱欒」に五編の詩が掲載される。17年、第一詩集「月に吠える」を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころりんぱ
47
富国強兵のスローガンの下、国家国民が一丸となって外国に進出して行く時代を背景にした文学、私にとっては明治維新……太平洋戦争の間のこの点々の部分はとても印象が薄くて、知識としても箇条書きの出来事みたいにしか持っていなかったので、かなり新鮮でした。シベリア出兵など、具体的な戦い方など想像もしたことなかったな。この頃から朝鮮や中国への蔑視が始まり、内需に伸び悩んだ日本が外国に活路を求めることで国内の不満のガス抜きもして…という時代の重要な転換期な訳で。2.26事件がテーマの2作品は特に興味深く読みました。2016/08/09
ナハチガル
7
岩井志麻子がこんなに文章が上手いとは思わなかった(失礼)。日清戦争期を舞台にしたキングばりのモダンホラー『依って件の如し』A。二十数編の中で一番面白かったのが、舅の話を聞き書きしたという宇野千代『日露の戦聞書』A+。このころにはまだ、戦争はロマンと冒険と海外旅行を合わせたような、おおらかな感じがあったのかもしれない。久世光彦は初読みだが文章がメチャ上手い(失礼?)。『尼港の桃』A+。陳舜臣『その人にあらず』A+は辛亥革命後の亡命者暗殺を扱った実話?構成が見事。こういうアンソロジーもいいですね。A。 2020/09/05
てつや
7
今回の作品群は、戦争そのものというよりも、戦時の人々の姿を描いた作品が多かったような感じ。 もちろん戦争の悲惨さは描かれているのだけど、それよりも、そこでそれなりに生活している人々の姿が描かれている気がして、なんだろう、「巻き込まれる前の日本」みたいな感じ? なので、戦時中なのに戦争が遠いというか、なんとなくそこにちょっと間があるというか、不思議な感覚を持ちました。 それにしても、ユーザー数が少ないことに驚き。 他の巻に比べると、地味なのかなぁ。。2011/10/27
てまり
5
刊行順に読んでますが、収録作から受ける印象が今まででいちばんバラバラな感じ。第二次世界対戦や9.11ってのは「あの戦争はこういうものだ」という共通認識があるけれど、日清・日露戦争はそうじゃないんだなと実感しました。戦争そのものがテーマではなく、書きたいものの背景として戦争があるような作品もいくつかあり、やはりまだ切迫感がなかったからかなと。2012/02/11
櫻井愛
3
ゴールデンカムイの無料公開期に偶然、図書館で見つけた本。日清戦争は柴五郎(守城の人、ある明治人の記録:会津人柴五郎の遺書)日露戦争は秋山兄弟(坂の上の雲)、森鴎外のイメージがあり、この本を通して、役職者クラスだけでない、兵たちの戦争を読みました。宇野千代先生の作品が特に良かったです。