内容説明
エリート会社員として定年まで勤め上げた竹脇は、送別会の帰りに地下鉄で倒れ意識を失う。家族や友が次々に見舞いに訪れる中、竹脇の心は外へとさまよい出し、忘れていたさまざまな記憶が呼び起こされる。孤独な幼少期、幼くして亡くした息子、そして…。涙なくして読めない至高の最終章。著者会心の傑作。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で第1回中央公論文芸賞と第10回司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞、2010年『終わらざる夏』で第64回毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞をそれぞれ受賞。「蒼穹の昴」シリーズは、累計533万部を超える大ベストセラーとなっている。2019年、同シリーズをはじめとする文学界への貢献で、菊池寛賞を受賞した。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
300
何となしに生きている今の人生に、人生を支えてくれている全ての方に、心を込めて『ありがとうございます』と口ずさむ。そんな余韻を残す作品。ハンサムエリート商社マンの主人公は定年を迎えた盛大な送別会の後、地下鉄で倒れて病院に。意識は戻らず眠ったまま。順風満帆と思われていた彼の出自。しかし、誰からも愛されなかった生い立ち。名前もなく誕生日さえ不明、捨てられ施設で生きてきた。誰にも話さなかった。記憶を消すしかなかった。眠ったまま、幻のように訪れる幾人かの素敵な女性。消し去った過去に交わるおもかげ。素敵な結末‼️🙇2020/12/18
ケイ
109
感動できなかった。歳を重ね、もう後半の方がずっと少ないなと思ってくると、作者の視点も変わるだろうし、こういう作品を求める読者もいるだろう。はばからずに言えば、ノスタルジーマスターベーションな印象。雪のマダムもある年代ウケだけしそうな。。。浅田作品で好きなものはたくさんある。敢えてこれは好きでないと記憶しておきたい。2022/09/07
hitomi.s
107
上司からの頂き本。前回同様、積ん読本をぶっ飛ばして読了。今日の私に至るまでに、いったいどれ程の人たちと関わってきたのだろう。私を含んだ物語を持ち合わせた人たち。話しても共有しても、伝えきれないことはある。楽しかった、嬉しかった、かなしかった、さみしかった、ありがとう、もっと見て欲しい、愛してる。家族友人恋人。言えなかった言葉も含め今ここで、伝えたい気持ちはなんでしょう。どうやっても「分かり合えた」は有り得ないので、せめて伝えられる範囲で、伝えたい気持ちを話せたらいいな。2020/12/23
matsu04
96
ストーリーテラー浅田次郎、さすがである。泣かせてもらった。すべてが明らかになる最終章が圧巻ではあるが、そのほかにもカッちゃんとの地下鉄駅での別れのシーンは何ともいいし、大学時代の恋人だった文月もとても切ないのである。2021/10/08
Kazuko Ohta
93
主人公は地下鉄で倒れて危篤状態にある男性ですが、私の心に痛烈に響いたのは、意識のない彼を見舞う友人の言葉。「旧友との一夜を作れないほど忙しかったはずはない」。本当に忙しい人は忙しいとは言わないと私は思っています。本当に忙しい人って、言わなくても見ていればわかるものだから。忙しい忙しいと言って回る人ほど、電話1本メール1通を面倒くさがり、そんなにヒマじゃないと言う。その知人友人身内がこの世からいなくなってしまう前に、もう一度言葉を交わさなくても、会わなくても悔いはないか。そんなことを改めて考えた1冊でした。2021/02/08