講談社現代新書
変わる家族と介護

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  • サイズ 新書判/ページ数 200p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784062880824
  • NDC分類 367.3
  • Cコード C0236

出版社内容情報

著者の春日氏は、30年以上にわたってケアワーカーや保健師の方たちと一緒に仕事をしてきた研究者ですが、この10年近く、家族と介護をめぐる状況が大きく変わったと感じるようになりました。

 たとえば、「高齢の親と同居する、経済力のない中年シングル息子/娘」の世帯が急増しています。介護と仕事の両立に悩む中年シングルの娘も増えています。高齢者夫婦の世帯で、夫が妻の介護や家事を担うストレスから、極端な場合は高齢者虐待に陥るケースも増えています。夫方の両親より妻方の両親を優先する夫婦も増えました。子が親を世話するという価値観が崩れ、二世帯同居でも実質ひとり暮らしという老母のケースもあります。

 著者は、このような状況を、「家族のかたちが大きく変わったことによって、家族に<セーフティネット>の役目を担わせるかたちでつくられている日本の福祉制度のあり方が限界に達し、人々が重大な困難に陥ったとき、どこからも救い手がなく、孤立し、ときには命までも脅かされようとしている」ということではないか、と考えています。

 本書はそのような「極端に聞こえるかもしれないが、けっして他人事ではない」ぬきさしならない家族と介護の問題の数々を、エッセイのかたちで語り、要所でデータなど解説を加えた本です。深刻なケースに対しても、著者の共感のこもった眼差しはあたたかく、個々の家族や、社会の制度について、どうしたらよいかを模索しながら語ります。誰にとっても大切で切実なテーマである家族について、考えるヒントになれば幸いです。


第1章  親に依存する同居中年シングルたち
「親ものんき」と思われて/このままギリギリまで行ってしまうと思う/息子に本音を言いにくい…
第2章  介護を担うシングル息子の孤立と孤独
介護する息子に話を聞いて/ある50代前半の息子の例/閉ざされる仕事への道…
第3章  シングル息子の介護と「金縛り」
仕事を続けながら介護するHさん/兄に対する態度と違う/娘が頼る親の年金…
第4章  娘家族・息子家族と親の関係はどう変わったか
いまどきの学生の結婚観/自分の親を優先したい理由/親の考えは娘にどう影響しているか…
第5章  夫が妻を介護するとき
「夫に介護してほしい」/仲が良くない夫婦間の介護/介護する夫の2つのタイプ…
第6章  希望はあるか―同居家庭内ひとり暮らしの孤独を超えて
息子夫婦との関係が突然壊れて/生き抜く力を支えるもの/人生90年時代に…
コラム1 中年シングル増大社会
コラム2 家族介護の担い手はどう変化してきたか
コラム3 公的介護保険制度の何がいま問題か


春日 キスヨ[カスガ キスヨ]
著・文・その他

内容説明

「無縁社会」時代の介護を考える。他人事ではない問題を、鋭く、あたたかい眼差しで描く。

目次

第1章 親に依存する同居中年シングルたち
第2章 介護を担うシングル息子の孤立と孤独
第3章 シングル娘の介護と「金縛り」
第4章 娘家族・息子家族と親の関係はどう変わったか
第5章 夫が妻を介護するとき
第6章 希望はあるか―同居家庭内ひとり暮らしの孤独を超えて

著者等紹介

春日キスヨ[カスガキスヨ]
京都精華大学教授などを経て、2006年から松山大学人文学部社会学科教授。専攻は、家族問題を対象とする臨床社会学。父子家庭の生活問題、高齢者介護の問題などについて、現場の支援者たちと協働するかたちで研究を続けてきた。2000年以降は、公的介護保険制度開始に伴い新たに浮上してきた家族問題に、「処遇困難なケース」や「高齢者虐待問題」を通して関わっている。『介護とジェンダー』(家族社)で山川菊栄賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

katoyann

21
高齢者介護における家族介護の問題について、男性というジェンダーの視点を軸にして分析した本。近年の傾向として増えているのは、就職氷河期世代の中高年男性が親と同居して介護を担う状況である。不安定雇用により低賃金労働に従事し、一人暮らしするだけの経済力を持たない男性が高齢の親を介護するようになったとき、仕事のストレスに加え、家事の不慣れも手伝って虐待加害に及ぶこともあるという。また、大体のケースでは老いた母が中高年の息子のために家事をするという。親元同居はリスクが高いので、中年の就労支援も保障するべきだと思う。2024/02/03

ヒナコ

10
近年、介護を担う家族と被介護者の関係は大きく変化した。 その変化の1つとして、子供世帯の経済状況の変化がある。高度経済成長を享受できた被介護者と、低成長の経済しか経験できなかった子供世代とのギャップは、近年現れている新しい問題である。これにより、親の年金や持ち家が、子供世代の生活保障になってしまっている実情がある。このことは、子供のキャリア形成を阻害し、親子共依存を自ら作り出してしまう他、子供世代の非正規化による雇用情勢の悪化を一時的に覆い隠してしまう問題も生じさせている。→ 2022/04/11

ヒヨドリスキ

3
介護保険が始まって早14年。新たに出てきた介護と家族の問題色々。二世帯同居でもインターホンでしか会話しない実質一人暮らしのパターンには驚いた。娘と仲が良いが息子と同居というねじれ関係や親と中年シングル家族の逃げ場の無さ、夫婦間介護の虐待等々。親戚等で思い当たる節もあるんだよね~。 今は地方でも嫁は夫の親を介護するつもりが無い人がほとんどらしい。最初から介護は家族を頼らないって決めてしまった方がお互いラクなのかも。2014/11/21

ハル

2
変化する社会の中で、家族の形や捉え方も、同じように変化している。これまでの介護は家族抜きには考えられないものだった。でもこれからの介護は家族の介護に重点を置くのではなく、サポートの一つ、さらには家族抜きで組み立てられるものにしなければいけない。ただこのシステムを介護保険で補うことは不可能であるから地域で共に支え合う、ご近所付き合いが、自分の身を助けるものとなるだろう。遠い親戚より近くの他人、嫁もかならず高齢者、肝に銘じておこう。2016/03/20

えむa

1
少子高齢化という宿痾、来たるべき超高齢化社会を前に、具体的な事例を通して家族のかたちが随分と変わってきているのを再認識した。つくづく安心して歳をとれない時代に生きてることを感じる。現在はもはや家族がセーフティネットとしての役割を担うことが困難な状況であり、支え合う共同体の仕組みをもっと広い視野で構築していく過渡期である。社会との繋がりを失わずに生きていくことがいかに大切かを痛感。孤立しないようにサポートする仕組みや人材ももっともっと必要。生き続けることは何事も勉強、というSさんの言葉が心に染みる。2016/02/07

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