出版社内容情報
全作品を通読してはじめて分かる秘密とは?
リトル・ピープル、羊男、ドーナッツ、井戸、蛍、海辺・・・村上春樹の小説作品を通底する物語世界とは何か。初級者もマニアも、読めば「目からウロコ」間違いなし。
内容説明
リトル・ピープル、羊男、ドーナツ、井戸、螢、海辺…全作品を通じて、読者に伝えようとしているものとは。謎に満ちた物語世界を案内する入門書。デビュー作『風の歌を聴け』以降、『1Q84』までのすべての長篇に触れながら考察した。
目次
近い「生」と「死」の世界
今そこにある言葉への不信
動物の力
偏愛する図書館
ブーメラン的世界
「あちら側」と「こちら側」
永遠のヒーロー・羊男
『雨月物語』
海の力
記憶〔ほか〕
著者等紹介
小山鉄郎[コヤマテツロウ]
1949年群馬県生まれ。一橋大学卒。73年、共同通信社入社。川崎、横浜支局、社会部を経て、84年から文化部で文芸欄、生活欄などを担当。現在、同社編集委員兼論説委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
冒頭に村上へのインタビューをしている記者だという断りが入っているところから嫌な予感がしていました。本書は村上作品の世界を逍遥するだけで、新しい解釈をする本ではありません。大体こういう本は象徴的に解釈すると強引だといわれて失敗し、構造的に解釈するとだまし絵的に成功するものです。「あとがき」に加藤典洋を参考にしたとありますが、その水準までに到底及んでいません。ベストセラー現象が、読まれているから読むというミメーシスの連鎖だということだけがよく分かったことが唯一の収穫でしょうか。2021/12/22
おいしゃん
38
村上春樹ファンとして、満足な一冊だった。そう言われてみれば…という発見多数。奇妙な名前や出てくる数にも、そんな深い意味があったのか…。2018/12/20
林 一歩
28
ここまで全肯定的な村上春樹評は珍しいと思いつつ読了。ありがちな切り口ながらも、的は外していない。村上春樹を全く読んだことの無い方向け。2015/07/06
那由田 忠
20
世には種々の村上春樹解説があるけど私が見る限りでは、評論家の断定的な解釈に終始するものが多い。その種の勝手な解釈をせずに、著者が何度もしてきた本人とのインタビュー内容から推測している点で、説得力ある春樹問題意識と世界観の説明となっている。春樹作品をコスモポリタンと評する人もいるが、極めて日本的であることの指摘に深く納得した。『風の歌を聴け』の日数が不整合と解明(これは他でもある)し、春樹の意図とわかる。ただ、関西に育って朝鮮人への言及がほぼない不思議さには気づいていないようだ。私は凄く気にしている。2020/11/03
ふろんた
13
読みつくすというのは、こういうことを言うんだな。自分はそういう読み方できないんだよね。勉強になったが、村上作品をもっと読みこんでから読めば良かった。特に「ねじまき鳥」。2013/01/29