内容説明
揺籃の地、満州が生んだ日韓の権力者、昭和の妖怪・岸信介と独裁者・朴正煕の軌跡。
目次
第1章 帝国の鬼胎たち(海を越える満州人脈;若き日の「妖怪」と独裁者)
第2章 帝国のはざまで(満鮮一体への道;「亡国の民」の満州;満州へ、満州へ;満州が生んだ鬼胎たち)
第3章 満州帝国と帝国の鬼胎たち(国運転回ノ根本政策;王道楽土の夢と現実;統制経済の実験場)
第4章 戦後と満州国の残映(甦る「鬼胎」たち;「未完のプロジェクト」;「満州型モデル」を求めて;再選後の危機と独裁への道;重化学工業化と農村振興の起源;鬼胎たちの日韓癒着)
著者等紹介
姜尚中[カンサンジュン]
1950年、熊本県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。国際基督教大学准教授を経て、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授。専攻は政治学、政治思想史
玄武岩[ヒョンムアン]
1969年生まれ、韓国済州島出身。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。同大学院情報学環助手を経て北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。専攻はメディア文化論、日韓関係論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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樋口佳之
50
二き」(東条英機、星野直樹)と「三すけ」(岸信介、松岡洋右、鮎川義介)と呼ばれる、満州国の実質的な支配者たちが揃う/8月は戦争の事が話題にのぼる事が多いけども、かつては常識の範疇だっただろう「にきさんすけ」に久しぶりに接したと思う。満州国を作った事忘れてはいけないし戦後史への影響大だな2021/08/28
coolflat
12
現在の日本の首相安倍晋三と韓国大統領朴槿惠。彼ら二人のルーツは「満州」にある。安倍晋三の祖父岸信介は総務庁の官僚として、満州国の産業開発に辣腕を振るい、かたや朴槿惠の父朴正煕は、満州国陸軍軍官学校を成績優秀で卒業した実績を持つ。岸信介を「政治家」として、朴正煕を「軍人」として、育てたのは満州国であったのである。満州国は「実験」国家であった。満州国での統制経済の実験が、そのまま韓国の開発独裁や日本の傾斜生産方式に応用された。この統制経済の実験=「満州国産業開発5カ年計画」の産みの親が岸信介であったのである。2015/05/07
富士さん
3
名著再読。新しい要素はないと著者は言われていますが、日本と韓国の近代を満洲国という共通項で説明する切り口と、それを本書の形でまとめたことが重要な仕事だと思います。そう考えれば、日本の敗戦というのは決定的な要素ではなく、満州国における国家社会主義的政策とそこで培われたコネは今に至るまで影響を与えていることがわかります。本書が特におもしろいのは日本であまり語られない日本治下の朝鮮社会の研究成果が盛り込まれていることで、これが紹介されることが、まじめな韓国歴史学を知る上でもいい気がするのです。2020/08/27
nori
3
Good surprise for me to focus on Park and Kishi. While I learned Kishi did bad things in Manchuria including opium business, I did not know about military record of Park. If authors imply their legacies to their grand son and daughter, it should be nice.
かずい
3
戦後、日韓の重厚長大型産業を基軸とした経済成長の原点は満州国の国家主導型「見える手」の経済構造にあったとする本。その経済政策を商工官僚であった岸信介、満州国軍の朴槿恵前大統領の父朴正煕元大統領にスポットを当てている。満州というと溥儀や関東軍主体で描くことが多いが、戦後の経済発展から見た視点で面白かった。それとまた朝鮮人から見た満州国というのも興味深かった。満鮮一体というスローガンの中、満州国へ夢を託して一攫千金狙いの朝鮮民族の人もいた反面、抗日戦線が発生もした。韓国・北朝鮮の分断国家となった原点でもある。2017/07/23