出版社内容情報
宮本 輝[ミヤモト テル]
著・文・その他
内容説明
聖司が生まれる前に父親が亡くなり、仕事を再開した母親に代わって彼を育てた祖母が生前遺した「ヒコイチ」という言葉がきっかけで大前美佐緒という女性を知り、聖司は道ならぬ恋心を抱く。一方、父親の死にも思わぬ真相が…。発酵という営みに人の生死や結びつきを重ね合わせ、「命」の根源に迫る長編小説。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒。’77年『泥の河』で太宰治賞、’78年『螢川』で芥川賞、’87年『優駿』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。’95年の阪神淡路大震災で自宅が倒壊。2004年『約束の冬』で芸術選奨文部科学大臣賞、’09年『骸骨ビルの庭』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei302
57
宮本輝氏の作品ではこれが一番好き。ページ数が残り少なくなるのが寂しかったけど、余韻の残る終わり方で、味わい深い。死は人の終わりではない、そう言う意味では、私たちは不死なのだ。酵母菌、乳酸菌などと同じく、身体が消えてしまうけど、目に見えないものとして、空間には存在するなど、哲学的で深い。何度目かの再読。読むたびにハッとさせられる。2022/02/06
シュラフ
26
ここ数年の宮本輝作品は、高級料理とか、ゴルフとか、芸術家とかばかりの成金趣味だったり、震災復興に関しての政府批判のアナーキぶりだったりで、読んでいて辟易感があったのだが、ホンモノづくりをテーマとしたこの作品はよかった・・・。地震、火災、事件、など人の災厄はあれこれあれど、災厄の不幸が新しい出会いという結果になっていく。人間の命は限りあれど、こうした宿縁は子、孫の代へとつながっていく。こうした永続的なつながりが発酵という自然の営みと重ね合わさって、なんともいえない余韻となって心に残る作品となっている。2015/06/28
あんな
18
「時を育てる心」というものをこの本から教わった気がします。効率を重視して、中途半端になるよりも、遅くても丁寧に取り組める仕事に携わりたいと思いました。手を抜かずに一生懸命に。仕事のやり方は就職して3年で決まると聞くので、とりあえず3年間しっかり働こう。そうやって働けるところに就職できるようにあと少し就職活動がんばろうって元気をもらいました!2014/05/16
ume 改め saryo
12
宮本輝さんのイメージが変わりました。この前読んだのが15年くらい前と言うのもあるのでしょうが、もっと 奇妙 なストーリーを描く人だと思っていました。 『 目には見えないけど、時間とともに変化する 』 その大切さを再認識するとともに、何事にも急ぎ過ぎの現代生活、特に食生活の乱れ。 【 医食同源 】 もっと時間をかける事、もっとゆっくりする事を考えさせられました。 。。。それとは別に、この終わり方がぁ。。。ゆあ~ん ゆよ~ん ゆあゆよん。。。 いつかまた読み返したいと思います(^^)2012/09/20
はち
10
もう少し続いて欲しいなぁという気持ちで一杯。結局本そのものが出来上がるところまでいかなかったんだから。一つの不幸が何年も経って新しい繋がりとなり…そういうことを考えると、人生って何がいいのか分からなくなる。いい作品を読むと感想が出てこないね。2012/07/27