出版社内容情報
宮本 輝[ミヤモト テル]
著・文・その他
内容説明
シェフの加賀たちとともに老舗の看板を守るアヴィニョンを乗っ取ろうとする男女が現れた。雅道と秘かに逢瀬を重ねながらも、彼らの仕掛けた悪質な罠と対決する覚悟を決めた典子。年老いた義母や隣家のブラウン老人を支えつつ、地元の経験豊かな知恵者たちの手を携えた闘いが始まった―。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒。’77年『泥の河』で太宰治賞、’78年『螢川』で芥川賞、’87年『優駿』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。’95年の阪神淡路大震災で自宅が倒壊。2004年『約束の冬』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マッピー
17
宮本輝が巧いので、話が面白いので、読み始めてしばらく気づかなかったけど、乗っ取りを企む悪人たちに対抗する手段を取ったところで上巻が終わったはずなのに、この下巻ではほぼ恋愛パートに終始している。地元のボスと言える人たちに窮状を話して、これから反撃だ!ってところから進まない。最終的には、守りを固めて相手を引っかける罠を作って、相手がそれに引っかかって、自滅。マジ?仕事か恋愛かという二者択一の考え方に、時代の古さを感じた。と、いろいろ書いたけれど、結局のところ一気にぺろりと読んでしまったのだ。宮本輝には勝てん。2024/05/10
とらこ
17
愛とは盲目な作品。無職で絵を描くことしかしない年下の男。いつの間にか深く愛してしまうアラフォー未亡人。人目を惜しんでは逢瀬を重ねる。携帯電話が無い時代の、ひたすら相手からの連絡を待つところがロマンティック。現代のガサツさなんて皆無で上品だったり、変に冷めてなくて情熱的だったり。クラシックな2人の合図に溜め息。新鮮で楽しめました。上巻に引き続き悪質な陰謀との対決にドキドキ。相性の良い作家さまで、次は何を読もうか選ぶのが楽しみです。2014/03/20
June
12
フランス料理店「アヴィニョン」を乗っ取ろうする策略、それには様々な人物が絡んでいることが次第に明らかになっていく。身近な人物、縁のある人物が加害者となり、被害者となり巻き込まれていく。読みながら背筋の寒くなるような恐怖も感じる。そんな陰謀の渦中にありながら、典子は恋に焦がれ恋に溺れていく。そして始終、アヴィニョンを一生背負っていく覚悟を決めてみたり、アヴィニョンを捨てて恋に生きようと思ってみたり揺れ動き続けている。事件、恋愛、料理、絵画、風景と様々な要素に彩られ、物語が面白く華やかになっている。2014/03/26
シュラフ
12
若くして寡婦となった女性の物語。歳下の絵描きくずれの若い男との恋、夫から継いだフランス料理店をめぐる乗っ取り騒動、など物語は展開していく。物語を彩るのが、料理店におけるシェフや運転手らとのやりとり、主人公と恋人である若い画家やシェフとの絵画をめぐる会話、などこじゃれている。神戸・北野が舞台という設定もよい。まるで殺人事件の出てこない土曜ワイト劇場のようで、気軽に楽しく読めた一冊だった。単調な生活に退屈する我々であるが、気持ちの持ち方次第では人生は楽しいのかしれないと思わせてくれる。 2013/10/18
yuki
9
亡き夫のフランス料理店を継いだ典子の新しい恋と店を乗っ取りから守る奮闘を描いた物語。神戸北野町にあるフランス料理店が舞台なので、あの素敵な町並みを思い浮かべながら読んだ。典子さんはあんまりにも皆に美しいと言われ過ぎていて感情移入できなかったけど(笑)登場人物一人ひとりの描きかたがうまいな。2013/04/19