出版社内容情報
大西洋に突き出したポルトガルのロカ岬から、18年ものあいだ結核の療養生活を送っていた天野志穂子のもとに一枚の絵葉書が舞い込んだ。一世を風靡(ふうび)したコーラスグループ〈サモワール〉のリーダー梶井克哉の書いた言葉が、諦念に縛られていた志穂子に奇蹟をもたらす。人間の生きる力の源泉を描いた力作長編!
宮本 輝[ミヤモト テル]
著・文・その他
内容説明
大西洋に突き出したポルトガルのロカ岬から、18年ものあいだ結核の療養生活を送っていた天野志穂子のもとに一枚の絵葉書が舞い込んだ。一世を風靡したコーラスグループ「サモワール」のリーダー梶井克哉の書いた言葉が、諦念に縛られていた志穂子に奇蹟をもたらす。人間の生きる力の源泉を描いた力作長編。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒業。’77年『泥の河』で太宰治賞、’78年『螢川』で芥川賞、’87年『優駿』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。2004年『約束の冬』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
39
結核で18年間もサナトリウムに入院していた24歳のヒロインはじめ登場人物に対する宮本輝さんのおだやかで温かい眼差しになんだか癒されました。ただし、梶井はまだ好きになれないなあ。2015/08/19
波多野七月
16
「ぼろぼろになるまで読み込んだ一冊」というのがあって、その中でもくたびれ具合が一番ひどいのがこの作品だ。どうして、こんなにも惹かれるのかわからない。手放しで「傑作」だと言い切れるものでは決してなく、ヒロインが出会う梶井という男性は、はっきり言って男としても人間としてもどうかと思う。けれどこれは、18年間結核で入院していた女性の物語であり、恋愛だけの物語ではない。おずおずと、誠実に社会生活へと飛び込んでいくそのまなざしに、読むたびに胸のなかに〈何か〉が宿る。きっとこの先も、くり返しこの物語と出会うだろう。2018/01/01
ろび
12
“「教養をつまなければ」と胸の内で言った。” 初めの一文にドキッとした。主人公の志穂子は確かに病院暮らしを18年。電車や渋谷や買い物を初めて体験することに本人は焦っているけれど考え方は非常に大人。 新しいステップに適応するために、百科事典を読み込んだり、英会話に通ったり、体験を増やしたりするその姿に、自分自身が” 教養をつまなければ”と思わされた。 今はきっと力をつける時ですよね。思い通りに行かない事も多いけれど出来ることを頑張りましょう。私は改めて本を読みます。2020/04/04
あんな
10
一度は諦めた通常生活を奇跡的に得られるようになった志穂子が一歩ずつ歩む姿が等身大で素敵で、でもそれ以上に思慮深さが印象的。その思慮深さから彼女が病室で過ごした時間の長さを感じました。 暇は人をダメにすると言いますが、時間があると色々考えてしまうけど、大体悪い方向にしかいかなくて。その後に時間が経って、自分の中で落とし所を見つけるところまでがワンセット。これを18年間続けていたと思うと脱帽です。 志穂子が幸せになれるといいなあと思いながら下巻へ2024/02/28
のんち
10
人間らしいと言えば人間らしいのかもしれないけれど、主人公の男が上巻では最低なので、むかっ腹立てながらこいつがどうなるのか読んでやるという、いつもと違ったスタンスで読めてちょっと楽しかった。主人公の女性と今後どう交わっていくのかすごく気になりながら速やかに下巻。2015/08/25