内容説明
「これは貸しだからな」。謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった…。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ一人、銀行の暗闇に立ち向かう!第四四回江戸川乱歩賞受賞作。
著者等紹介
池井戸潤[イケイドジュン]
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学文学部・法学部卒。1988年、三菱銀行(当時)に入行し、おもに中小企業向け融資を担当。同行を退社後は、コンサルタント業のほか、ビジネス書の執筆を手がける。1998年、本書で第44回江戸川乱歩賞受賞。会社員時代の知識と経験を活かした金融ミステリーの書き手として注目される
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アサガオ
541
果つる底なき(@ ̄□ ̄@;)!!「現代の日本社会企業は、上司の言葉が『絶対』で、『おかしい』と思ったことも、言ってはいけない体制が一部、伝統として確立されてはいないだろうか」..「銀行◇債権回収◇命懸け」..「坂本の死◇『謎の言葉』◇不正の疑惑」..「大銀行◇融資◇闇◇派閥◇政治◇出世への道」..「坂本の正義◇貫く想い◇真相を解明するために闇と闘う行動力◇事件解決への道」..「どんな困難な状況に追い込まれても、不正のない企業体制になってほしい。◇誰かを犠牲にしない体制の確立を・・・・・」2016/10/29
サム・ミイラ
536
池井戸潤のデビュー作にして乱歩賞受賞作。当然現在のスタイルとはかなり違う。陰謀に巻き込まれた銀行員が連続殺人の謎を追うミステリー。だが舞台は銀行ではない。事件のきっかけが銀行だったと言うことだ。銀行内部の事情も描かれているがどこかグリシャム的展開を銀行に置き換えたような物語である。硬質な語り口に殺害された友の仇討ちという点や何よりハードボイルドな感覚は新鮮で読後感も良く乱歩賞に相応しい出来。だがこの路線を踏襲せず今に至る作風に変えていったのは氏の先を読む力と才能の賜物だったのだと改めて感心した次第。2016/08/08
HIRO1970
528
⭐️⭐️⭐️池井戸さんが35歳の時の作品で江戸川乱歩賞受賞作でした。だいぶ初期の作品なので現在の著者の本とはかなり趣きが異なり、全体に本格企業小説的な冷たくドライな味付けになっていて逆に新鮮味を感じました。間もなく20年が経ちますが、古さは無くイントロも全体の構成も良く、面白くてどんどん読めてしまう作品でした。銀行ミステリーという、新しい分野のミステリーを開拓し開花したエポック的な作品として後世に残る逸品になるかも知れません。2016/02/03
遥かなる想い
466
第44回江戸川乱歩賞受賞作。企業小説としては面白い。死亡した男の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった……という設定はありふれているがおかげで飽きることがない。2010/07/10
再び読書
409
ハードカバーで読んだが、写真無しなので文庫に登録。文句無く面白かった。池井戸氏の作品はバブル入行組2作しか読んでいませんが、共通するのは、妥協なき真実探求心に感じる。特に今回は殺人に発展している糸口を掴んだのに、命も顧みず真相解明にまっしぐらに掘り進めて行く。そこにハラハラドキドキするのもご愛嬌でしょうか?確かに組織、それも銀行の派閥や、立身出世に囚われない一匹狼が友人のかつての恋人のため、戦うドラマ。現代風のハードボイルドテイストを感じさせる楽しめた作品でした。2013/04/08