内容説明
中原の小国鄭は、超大国晋と楚の間で、絶えず翻弄されていた。鄭宮室の絶世の美少女夏姫は、兄の妖艶な恋人であったが、孤立を恐れた鄭公によって、陳の公族に嫁がされた。「力」が全てを制した争乱の世、妖しい美女夏姫を渇望した男たちは次々と…。壮大なスケールの中国歴史ロマン、直木賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
90
絶世の美女「夏姫」を描いて、直木賞を受賞した作品。中国の歴史には傾国の美女が何人も 登場するが、私は知らなかったので、興味深く読んだ。2010/06/12
NAO
80
再読。中国の歴史上でも有名な悪女・妖姫の一人として名を知られる春秋時代の鄭の夏姫の生涯を描いた物語で、第105回直木賞受賞作品。兄に手をつけられた夏姫が公室の不祥事を嫌った父王によって陳の御叔に嫁してからは、もっぱら、この時代の各国の実状、戦の状況が描かれていく。結婚後の夏姫に動きはほとんどなく、彼女の周囲が大きく動くのは、下巻になってから。2021/04/01
KAZOO
76
宮城谷さんが直木賞を受賞された作品なのですね。やはりかなりエンターテイメント性が入っておられます。最近の三国志などに比べると、歴史の根本的なところは変えておられないようですが、自由闊達に書かれている気がします。物語としての楽しみがありますね。2015/06/13
ふじさん
45
再々読。直木賞受賞作。小国鄭は、大国の晋と楚の間で、絶えず翻弄される運命にあった。鄭の夏姫は、兄の子夷の恋人となるが、父の鄭公はそれを知り、夏姫を嫁がせるが、若くして夫を亡くし、一人息子と辛い生活を強いられる。唯一の頼りとした兄を失い、路頭に迷う夏姫。夏姫の波乱の運命と大小の国々の攻防が描かれ中国の戦国物を読む楽しさがある。 2020/05/20
Tanaka9999
28
1995年発行、講談社の文庫本。この巻では主人公周辺よりも国際関係の記述が主。歴史の国際関係は戦争の記述。春秋左氏伝を見ているとこの後の戦国時代の権謀術数とはかなり違う世界。氏族が違うのは民族が異なるようなイメージ、というのは納得がいくようないかないような。結構、亡命とかした大夫とかが徴用されるパターンもあるし、戦国では他国に遊説する人とかが増えて秦の統一以前からまとまりつつあるようにも感じる。とはいえ戦国(と楚漢戦争)では穴埋めでウン万人を殺したとかあるから別民族の意識は大きかったのかも。2021/04/13