内容説明
女だてらに丁半勝負に興じるお伝の美貌の陰には、夫・浪之助への新妻の如き愛が息づいていた。時は明治初年、薬も加持祈祷も効のない夫の業病治療のため、彼女は利根川の村から東京の名医へと人力車を走らせる。前途に凄惨な運命が待ちうけているとも知らずに…。希代の毒婦として処刑されることになる高橋お伝の生涯と女心の振幅を、戯作的雰囲気と濃密なエロティシズムの中に描いた情緒派の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayzk
9
面白い。所謂、いい意味での「ベタ」で「クサイ」物語。テンポのいい、講談や落語を聞いてるように展開する。言葉の粋な言い回しも心地よい。或る美術展で小村雪岱の挿絵としてこの小説が紹介されていた。高橋お伝?なんか聞いたことあるな、面白そうな小説じゃないか、と読んでみた。下巻の展開が楽しみである。2021/10/19
NICK6
2
お伝がいいっ、お伝が!おんなの艶、おんなの美。呼び寄せて災厄、巻き込んで悪女。あれえっ、純潔やられる、殺しと憎しみ全方位の危機。そんな絶体絶命時の、お伝の気転!咄嗟のやばすぎる嘘で絶妙。巧妙が故の新たな地獄。堪りません。流石の当意即妙。私の心は奇々怪々。見せて魅せてのおんなの武器は滲む妖艶と麗美で。必殺の媚態でカメレオン。これ総動員して必殺の舞い。ただし嘘八百の罠。しょうがない。刀も腕っぷしもないもん。お口で立ち向かうしかない。物語は懐に即没入。善人も悪人も講談調で粋。上巻は仕掛けられての地獄。下巻は?2020/07/01