講談社選書メチエ<br> 九鬼周造―理知と情熱のはざまに立つ“ことば”の哲学

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講談社選書メチエ
九鬼周造―理知と情熱のはざまに立つ“ことば”の哲学

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  • サイズ B6判/ページ数 240p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586306
  • NDC分類 121.6
  • Cコード C0310

出版社内容情報

『「いき」の構造』で知られる哲学者・九鬼周造(1888?1941年)。その生涯をたどりながら、全主要著作を明快に読み解く。『「いき」の構造』(1930年)で知られる哲学者・九鬼周造(1888-1941年)は、東京帝国大学を卒業したあと、ヨーロッパに留学した。ドイツではリッケルト、フッサール、ハイデガーに学び、フランスではベルクソンと知り合って対話を交わすなど、本場で哲学の訓練を受けたことが知られる。帰国後は没年まで京都大学哲学科で教授を務めてフランス哲学や現象学などを教える一方、留学中に強く認識した日本の美と文化を追求して、『「いき」の構造』を執筆するに至った。続いて発表された『偶然性の問題』(1935年)、『人間と実存』(1939年)、『文芸論』(1941年)といった著作を手に取ればすぐ分かるように、九鬼が関心をもった対象は、「偶然性」、「時間」、「美」、「押韻」など、きわめて多岐に及んでいる。
多様な姿を見せる九鬼の哲学には、しかし一貫した問題意識がある。──本書は、そのような視点から、九鬼周造という神秘と魅力に満ちた人の生涯をたどり、すべての主要著作をていねいに読み解いていく。
哲学書はもちろん、『ウパニシャッド』などの古代インド文献、『ミリンダ王の問い』や『浄土論』などの仏教文献、さらにはボードレールやヴァレリーの詩、富士谷御杖の歌論書にまで及ぶ膨大な文献から、明確な輪郭をもつ理論を彫琢していく力。さまざまな現象から聴き取ったものを論理的に把握し、緻密に構造化する力。九鬼周造という哲学者だけがもつその力のありかに、近代日本哲学研究の第一人者である著者が迫る。
 「〈ことば〉の哲学」というキーワードを手がかりにして、九鬼の生涯と全思索を魅力ある筆致で描ききった本書は、最良の入門書であるだけでなく、他では体験できない知的冒険をもたらしてくれるだろう。

序 章 九鬼周造――「言葉」の哲学者
第一章 九鬼周造の生涯と思想
 1 生い立ち・家庭
 2 高校・大学時代
 3 ヨーロッパ留学
 4 京都大学時代
 5 人となり
 6 思想の源泉
 7 九鬼周造の哲学
第二章 「いき」の構造
 1 問題としての「いき」
 2 分析の方法
 3 「いき」とは何か
 4 方法論の揺れ
 5 開放性と閉鎖性のはざま
 6 概念的分析の限界と哲学の意義
第三章 偶然性の哲学
 1 なぜ九鬼は『偶然性の問題』を執筆したのか
 2 「偶然性」とは何か
 3 原始偶然
 4 九鬼の偶然論の射程──「生の論理学」をめざして
第四章 時間について
 1 東洋的時間
 2 円環としての時間――魂の輪廻と宇宙の輪廻
 3 同一性と多様性という逆説
 4 時間論に込められた意図
第五章 芸術・文化・自然
 1 無限の表現としての芸術
 2 日本文化と世界文化
 3 自 然
第六章 文学・詩・押韻
 1 文学と時間
 2 音 韻
 3 日本詩の押韻
参考文献
あとがき


藤田 正勝[フジタ マサカツ]
著・文・その他

内容説明

稀代の哲学者・九鬼周造(一八八八‐一九四一年)。東洋と西洋の邂逅を体現したその思索は代表作『「いき」の構造』(一九三〇年)に結実する。「いき」のみならず「偶然性」、「時間」、「美」、「押韻」など多彩な領域に及ぶ関心を貫いていたものは何か?生涯をたどりながら全主要著作を読み解き、“ことば”を手がかりにして、その本質に迫る。

目次

序章 九鬼周造―「ことば」の哲学者
第1章 九鬼周造の生涯と思想
第2章 「いき」の構造
第3章 偶然性の哲学
第4章 時間について
第5章 芸術・文化・自然
第6章 文学・詩・押韻

著者等紹介

藤田正勝[フジタマサカツ]
1949年、三重県生まれ。1978年、京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。1982年、ボーフム大学(西ドイツ)大学院博士課程修了。博士(文学)。京都大学文学部教授を経て、京都大学大学院総合生存学館教授。専門は、ドイツ哲学・日本哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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さえきかずひこ

14
1章では九鬼周造の生涯を端整に素描し、2〜4章ではそれぞれ主要な著作である『「いき」の構造』、『偶然性の問題』、『時間論』を資料を博捜したうえで丁寧に論じていくことを通して彼の「ラチオナリスムの音域から締め出された音を聴き取る力」(P.233)がいずれの著作にも溢れていることを指摘する。6章では詩作における押韻についての九鬼の考え方を考察し、音を楽しむことを愛した彼のロマンティックで文学的な側面を自然と浮き彫りにしている。生き生きとした思索を短い人生のうちに徹底して追求した哲学者を知れる大変優れた入門書。2020/02/17

ゆきだるま

6
「いき」の構造、偶然性、時間、芸術・文化・自然、文学・詩・押韻 これらのテーマはどこかで繋がっている気がした。あえて日本的なのか、おのずとなのか、仏教的な考えが根底にある、それで曖昧だとも感じるけど、まあそもそも、その考え自体が、流れてる、理論からこぼれたもののところを拾うというか、そういう見方で見るとしっくりまとまってるとも言えるかも。つまり、the西洋哲学って感じじゃないのがいいのだと。この日本人的な心地よさは大事だと思う。文学と時間に関してぐっときたとこ→2022/08/23

sk

6
具体的な体験をありのままに哲学するという姿勢に貫かれた九鬼周造のコンパクトな入門書。読みやすいです。2016/12/29

M

1
九鬼は生を哲学することが、哲学の目標であり、その存在の意義であると考えた。実際に「いき」の構造や偶然性の問題などは具体的な体験とその概念による把握をその「無窮」の追跡の中で両者は一つになりうるという九鬼の信念によって現れたものだといえる。また、「存在」と「非存在」とを、あるいは必然性と偶然性とをその必然的な相関において把握することによって、はじめてわれわれは存在が何であるかを把握できるのではないか。そのことによって哲学は初めて生命を獲得しうるのではないか。九鬼の思索の独自性はこれらの問いに支えられている。2020/01/14

Yuki

1
あんまり日本の思想には興味がわかない。2018/07/29

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