講談社選書メチエ<br> 女たちの平安宮廷―『栄花物語』によむ権力と性

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講談社選書メチエ
女たちの平安宮廷―『栄花物語』によむ権力と性

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  • サイズ B6判/ページ数 277p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062585996
  • NDC分類 913.422
  • Cコード C0393

出版社内容情報

物語は権力が天皇の閨房から生まれることを暴く。生むこと、母となることの連なりに走る亀裂が男たちの世界を作り、やがて掘り崩す。

本書は、平安時代の摂関政治がどのように権力を生み出していったか、そのしくみについて女たちの後宮世界からみていくものです。
平安時代の宮廷サロンが生み出した文学作品に、「歴史物語」とよばれるジャンルがあります。男たちが漢文で記す「正史」にたいして、女たちの使う仮名であらわしたものです。できごとを羅列する無味乾燥な「記録」にたいして、できごとを活き活きと語る「物語」です。
平安宮廷の表舞台は摂関政治に代表される男の世界ですが、周知のようにその根底を支えているのは男と女の性の営み、天皇の閨房にありました。摂政関白という地位は、天皇の外祖父が後見役になることで得られるものですから、大臣たちは次々と娘を天皇に嫁入りさせ、親族関係を築くことに必死でした。
そうした要請から、摂関政治は結果として一夫多妻婚を必然としました。後宮に集う女たちは、天皇の寵愛を得るために、そして天皇の子、とりわけ次代の天皇となる第一皇子を身ごもるために競いあいました。
天皇の後見と称して、その権限を乗っ取るようにして発揮する最大の権力が、天皇と女たちの情事に賭けられていたというのは、ずいぶんと滑稽な話ですが、「歴史」はそういうことをあからさまにしたりはしません。あくまで男同士の権力闘争として書くわけで、むしろその本質であるはずの、いくつものサロンの抗争や女たちの闘争は「物語」にこそ明らかになるのです。
その恰好の例が『栄花物語』です。作者は歴史的事実をあえて無視したり操作することで、女であること・生むこと・母となることの連なりに走る裂け目こそが、男たちの世界をつくってはやがて掘り崩し、そうした変化が新しい権力構造を生みだしていくことをはからずも明らかにします。

はじめに なぜ『栄花物語』なのか

第一章 「オモテ」の権力と「ウラ」の権力

第二章 後宮からの出発

第三章 花山帝という存在

第四章 生む政治

第五章 女房・召人・乳母

第六章 システムの揺らぎを語る

むすびに 院政期のはじまりへ

【著者紹介】
木村朗子(きむら・さえこ)
1968年横浜市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、津田塾大学教授。専門は、言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学。著書に『乳房はだれのものか─日本中世物語にみる性と権力』(新曜社 、女性史学賞受賞)、『恋する物語のホモセクシュアリティ─宮廷社会と権力』『震災後文学論─あたらしい日本文学のために』(ともに青土社)などがある。

内容説明

かつて閨房から権力が生まれる時代があった。摂関政治とは「娘の懐妊」にすべてが賭けられたシステムである。女であること、生むこと、母となること…。その連なりに走る亀裂が男たちの世界をつくり、やがて掘り崩すことを、『栄花物語』の作者は見逃さない。「男もすなる歴史を女もしてみむ」ともいうべき語りの冒険を読み解く。

目次

はじめに なぜ『栄花物語』なのか
第1章 「オモテの権力」と「ウラの権力」
第2章 後宮からの出発
第3章 花山帝という存在
第4章 生む政治
第5章 女房・召人・乳母
第6章 システムの揺らぎを語る
むすびに 院政期のはじまりへ

著者等紹介

木村朗子[キムラサエコ]
1968年横浜市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、津田塾大学教授。専門は、言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学。著書に『乳房はだれのものか―日本中世物語にみる性と権力』(新曜社、女性史学賞受賞)、『恋する物語のホモセクシュアリティ―宮廷社会と権力』(女性史学賞受賞、青土社)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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