出版社内容情報
産めよ殖やせよ。強きゲルマン人の子を大量に得るために性の解放を謳うナチズム。人々の欲望さえも動員したナチの生政治の実態を解明
すべての性欲を解放せよ！！！
人間の欲望さえも動員するナチズムの＜性-政治＞
産めよ殖やせよ。強きゲルマン人の子を大量に得るために性の解放を謳うナチズム。従来の定説を覆し、欲望の禁止ではなく、解放により大衆を支配しようとしたナチズムの生政治の実態に、豊富な原資料から光を当てる。
［本書の内容］１．性生活の効用 ２．男性国家の悪疫 ３．結婚を超えて ４．裸体への意志 ５．ヌードの氾濫 ６．道徳の解体
内容説明
産めよ殖やせよ。強きゲルマン人の子を大量に得るために性の解放を謳うナチズム。従来の定説を覆し、欲望の禁止ではなく、解放により大衆を支配しようとしたナチズムの「性の政治」の実態に、豊富な原資料から光を当てる。
目次
第１章 市民道徳への反発
第２章 健全な性生活（性的啓蒙の展開；性生活の効用）
第３章 男たちの慎み（男性国家の悪疫；結婚を超えて）
第４章 美しく純粋な裸体（裸体への意志；ヌードの氾濫；女性の魅力）
第５章 欲望の動員（新しい社交；悪徳の奨励；道徳の解体）
著者等紹介
田野大輔［タノダイスケ］
１９７０年、東京都に生まれる。京都大学文学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程（社会学専攻）研究指導認定退学。現在、甲南大学文学部教授。京都大学博士（文学）。専攻は、歴史社会学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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harass
57
ナチスの性への対応と考えと実態を考察。ナチは意外にも国民の性に関して自由であったことが分かる。旧弊な道徳では無く新しい道徳を築こうとしていたのだ。性の欲望をも国家の力に取り込もうとする狙いがあるが、アーリア人至上主義のナチズムの建前と実態、人間の重要でデリケートな部分である性のゆえの矛盾が生じた。婚前婚外交渉の容認、健全な美の裸体としてのヌード写真の容認、管理売春、戦争功労者への重婚など、道徳を戦争機械としての国にふさわしいものに作り変えようとすることの実例として読むことができる。労作。2017/04/05
HANA
45
第三帝国下での性に関する政策とその実態を論じた本。性教育やヌード、性行為と、様々な角度からナチズムと性について迫っているのが興味深い。ナチスの性政策とは異常に厳格できっちりしたものと想像していたが、実態は様々な矛盾を抱えており行き当たりばったりな面が多いのに驚かされる。出された政策で共通するのは性行為を通じ国家、民族の強化だが、実態は売春、不倫や終いに乱交まで飛び出す始末。大戦末期になるにつれて矛盾と奔放さが表に出ているよう。やっぱりセックスって、権力やイデオロギーで操作できるものじゃないんだよなあ。2013/12/19
樋口佳之
14
同盟国であった日本にはどのように伝わり、どう評価されていたのだろうかとか、同時期の日本はどうであったのだろうかとか考えました。/地獄に堕ちた勇者ども』は機会があれば必ず観たいと思いました。2017/01/14
またの名
13
鑑定者の前で売春婦と交わることができなかった同性愛者は収容所送りでも、退廃的でない健康な生の喜びは奨励したナチス。裸にとにかく眉をひそめる保守派、堕落してさえなければ健全な美を示す女体はOKとするナチ幹部、裸を見たり羽目を外すチャンスには何でも群がる若者たちの思惑と欲望がせめぎ合う様を描き、ナチ体制においても性は抑圧されていなかったというフーコー的主題を立証。ここから淫蕩の行き過ぎは全体主義になると快楽を全面的に敵視する清貧主義を引き出すのも、快楽主義ならば必ず圧制への抵抗になると結論するのも避けるべき。2017/05/31
二人娘の父
12
『ファシズムの教室』の田野氏による独特な研究作品。ナチス・ドイツが、性をどうとらえ、利用し、貶めたのか。ほとんど類書のない研究なのではないかと思う、独自の研究のように思う。ジェンダー的な視点からも、ファシズムと性的な堕落など、きわめて興味深い事実の連続にただただ圧倒される。2021/12/21
