講談社選書メチエ
「歓待」の精神史―北欧神話からフーコー、レヴィナスの彼方へ

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  • サイズ B6判/ページ数 196p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062584036
  • NDC分類 164.389
  • Cコード C0310

内容説明

何ものかわからないものの訪れを無条件に受け入れて喜ぶ。この「歓待」の精神は、一方では、現代思想の重要なキーワードとして、ますます注目をあびている。フーコーやレヴィナスやデリダの思考は、どのような射程をもつのか。北欧神話に「歓待」の根源的なかたちを見出し、現代思想に架橋することで、新たな倫理を構想する、清新な論考。

目次

第1章 北欧神話の基本構造
第2章 「歓待」の萌芽―北欧神話が語り継いだもの
第3章 神話から現代倫理へ―フーコーとレヴィナスを架橋として
第4章 「歓待」の倫理
第5章 「歓待」が生みだすもの―「共‐同体」へ
終章 環境思想としての「歓待」の倫理

著者等紹介

八木茂樹[ヤギシゲキ]
1966年、福井県生まれ。広島大学工学部、同大学総合科学部卒業。同大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、広島大学総合科学部等非常勤講師。専攻は神話、現代倫理(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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マウリツィウス

18
【『古代北欧の精神と調和論考』】北欧神話追求において要となる《ラグナロク》思想の解体要約とも呼べフランス現代思想の系譜学を参照し原点起源へとゲルマン文明を立返らせる。ドイツにおける産出成果と定義される北欧神話を人類学共時論により導き出すことで新規像を証明していく。そして、北欧の幻想譚の汚名を払拭させるこの良著は聖書/ホメロス中心主義の古代古典言及を暗に批判することでテクストへの懐疑性を誘発、フーコー/レヴィナス共鳴の根拠とは脱構築多様論への反証であり一義的に過ぎない西洋文明の表象に北欧の遺産を蘇らせる。2013/05/18

ハチアカデミー

12
自己を認識したとき、他者が生まれる。共同体が形作られる時、外が生まれ、敵が生まれる。境界線を引くことに躍起になる現代において、外部からやってくる他者を無条件に受け入れること=「歓待」することは、困難を伴うものである。本書は、北欧神話を素材に、かつての社会の有り様と人々の心性を探ることで、現代の社会が何を失ったのかを探る試みである。特に、フーコーやデリダの哲学が提示した「歓待」がどうすれば現代に通用するのかを探る試みでもある。ローカルなものを見つめ直すこと、自然とのコレスポンダンスをすることの重要性を説く。2014/10/08

Ecriture

8
北欧神話は神々と巨人の間の緊張関係が続く。共同体維持のためには外の取り込み(巨人狩り・ヴァイキング行為)が不可欠であり、トールの巨人討伐は人間社会と自然の緊張関係に見立てられる。ユグドラシルの根源性・無限性に切れ目を入れ、制限された認識の枠組みで世界を語る近代の人々(フーコー)は、 の不気味な不意打ちを鎮めようとしている(レヴィナス)。利害に基づく共同体の排除を憂い、他なるものを取り込むシャーマン的生や、無為性を帯びた個による「共-同体」の歓待(ナンシー、デリダ)を志向する。2015/04/17

壱萬弐仟縁

6
前半1,2章はとっつきにくかった。後半の方がすんなりいける。バンヴェ二ストによると、歓待=hospitalité に逆説があるという。ラテン語hostisは敵対者(116頁)。一方、ギリシア語posisという夫(117頁)。排除し合う言葉の原義とのこと。喜んで待つという意味だと、待望なのだが、排除となると? このあいだ、ホスピタリティの本を読んで、おもてなし、という感じだと思ったが、よく考えれば、相手によっては、排除の対象にもなるかということか。初めての相手には慎重たれ、という含意を読み取ったが、深読み?2013/06/06

ちゃちゃまる

4
“何ものかわからないものを無条件に絶対的に受け入れるという「歓待」の精神” 。理解不能なものといかにかかわるか は、私にとって大きなテーマです。看護職につくとすると、理解不能な他者の、理解不能な生活や命と、私はどう関わるのだろうか。私のなかで初めて歓待(hospitality)という言葉が医療と繋がるきっかけになった、スペインのサンパウ病院に、師匠が行ってきたらしくて。私がこの本を噛み砕きつつ読んでること知らないのにタイムリーだな、と思いました。2013/03/11

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