内容説明
環境の中の存在という視点をもって、近代以降の哲学、心理学で主流をなしてきた認識論と存在論に再考を促すほどの大きなインパクトを与えたアフォーダンス理論。その革新性は、価値や意味を主観の中の観念のようなものから、環境に実在するものとして捉えなおすという、大きな転回を倫理学に引き起こすものでもあった。「善悪は主観的なもの」という現代の常識を乗り越え、道徳の根源を見つめなおす試みが、いまここに始まる!人間の個別性を尊重する、あらたな倫理学への挑戦。
目次
序論 個別の存在を肯定する哲学へ
第1章 アフォーダンス―実在する価値と意味
第2章 生命の規範と社会の規範
第3章 道徳的価値の実在性
第4章 道徳の規範性はどこからくるのか
第5章 法化されない道徳と「直接の共同体」
著者等紹介
河野哲也[コウノテツヤ]
1963年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(哲学)。玉川大学文学部准教授。専攻は哲学・倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bartleby
4
現在の道徳観や倫理についていくつか問題が指摘されている。ひとつは意味や価値があくまで主観的なものとして考えられていること、ふたつめは道徳が法的なイメージで考えられてしまっていることなど。前者の問題には、アフォーダンスの理論を応用して意味や価値の実在性を考え直すことが、後者の問題には、ケアの倫理や田山花袋、サドまで参照しながら、人間の多数性や個別性に根差した倫理を考えることが提案されている。一つの問題を深く論じるという感じではないので期待とは少し違ったけれど、新しい倫理の可能性としては面白いと思った。2013/06/16
しょ~や
3
客観、実在という語の使い方には難しい部分があり、納得しながら読めたわけではない。ただ、後半「なぜ人を殺してはいけないのか」という疑問とその周辺の議論は非常に面白い視点であった。2015/12/18
sk
3
アフォーダンス。面白い。2014/03/02
gerumanium
2
タイトルから受け取る印象とは異なり、アフォーダンスを焦点化しないで善悪判断、法意識に関する我々の認識を根源的な生物性の関係性から描写しようとした書といえるのだと思う。私はアフォーダンスを議論の俎上にあげることで人間同士の特定の能力のみに由来しない「環境と人間の関係性によって立ち上がる善悪の学」についての書だと思っていたが違うようだ。最終的にアフォーダンスはあまり取り上げられず、旧知的な人間同士の原法意識に関する議論で終わってしまった印象である。しかしながら、本の目的を別にすればよく纏まっている本でないか。2010/11/16
ノンタス
1
主観的に見える善悪の基準も、スケールを変えることである程度客観的に見ることができるという話。 アフォーダンスというのは、例えば「リンゴは人間に食べられることをアフォードする」のような、当然起こり得る可能性のことをを指した用語。2019/09/20