内容説明
造字にこめられた古代中国人の知恵、極めつきの難訓字を読む面白さなど、漢字に囲まれて育った著者が綴るユニークな漢字論。
目次
第1章 漢字との出会い(活版印刷屋の息子に生まれて;名もなき人びとの文字)
第2章 古代文字を楽しむ(はじめて文字が使われたとき;漢字のルーツをさぐる)
第3章 古代文字の世界に遊ぶ(漢字の作り方;古代中国人の世界を読む)
第4章 漢字の宇宙(増えつづける漢字;海を渡った漢字)
第5章 現代日本と漢字(漢字制限論の流れ;コンピュータ時代の漢字)
著者等紹介
阿辻哲次[アツジテツジ]
1951年大阪市生まれ。京都大学文学部卒業。同大学大学院博士課程修了。現在、京都大学総合人間学部教授。専攻は中国文字文化史
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
65
さっき読んだ「三日月堂」は、活版印刷所が舞台の小説。阿辻先生は、自ら「活版印刷屋の息子に生まれて」という章を立てて、漢字研究者となった自己紹介をしている。偶然はすごい。漢字の歴史を語りつつ、コンピュータの発達と漢字の関係におよぶ。2001年発行。わずか2ヶ月未満で4刷まで出ていて、当時かなり売れたのだろう。音声コミュニケーションをになうツールである携帯で、当時でもすでにメールの方が多用されており、文字コミュニケーションへの回帰、らせん状の進化を予想するなど、約20年後の現在につながる記述が的確だ。2020/01/04
金監禾重
7
漢字ネタのごった煮。全編おもしろく読んだが、漢字廃止論と打字機械の進歩、会意漢字のピクトグラム性などが特に面白かった。打字機械は漢字文化と極めて相性の悪いタイプライターに始まり、漢字廃止論の強力な論拠となった。しかしワープロ、パソコンと機械が進歩することで、手書きよりも漢字を楽に使えるようになった。無駄に漢字を多用する、書けない・知らない漢字を使ってしまう、などの弊害がある。自分が受け取ったら読めない漢字でさえ、打つときは機械が勝手に選んでくれるのだ。2019/02/26
解体工事
7
阿辻先生の著書4冊目読了。阿辻先生の生い立ちや漢字にのめり込んでいった経緯が楽しく読めたのと、漢字の画数や部首の分け方(形声や象形etc..)などの漢字の持つ側面に起こり得る問題は大変興味深かったです。内容は深いですが、分かりやすい書き方で読みやすかった。また手書きからワープロなどパソコン機器に変わった際の漢字についての問題点など、分かりやすく著者の考えがまとめてあり、勉強になる。現存する最古の漢字である甲骨文字は、まだ発見されてから100年が過ぎたばかりの、「新発見の古代文字」である。意外と最近なのか。2018/11/21