内容説明
世界の終わりが迫る。キリストの裁きの時が訪れる。大聖堂の彫刻に、礼拝堂の天井画や祭壇画に、人々は終末の風景をあくことなく描く。至福千年説、洪水幻想、楽園願望―キリスト教はなぜ世界の終焉に魅せられるのか。ジョット、ボス、ミケランジェロなどの代表的「最後の審判図」を読みながら、現代に通底する西洋の心性を読み解く。
目次
終末のスペクタクル
「最後の審判」の図像学
アンチクリスト
「最後の審判」図を読む(イタリア;ロマネスクから北方へ)
楽園幻想―ボス「快楽の園」を読む
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
2
美術史に繰り返し現れる天国と地獄、最後の審判の主題の変遷を追う。ロマネスク聖堂のタンパンの彫像から、フラ・アンジェリコやシニョレッリやミケランジェロ、ロヒールやメムリンクやレイデン、ボスなど中世ヨーロッパからルネサンス期のイタリア、北方の祭壇画まで、幅広く扱われている。千年王国や冥府の秤、偽キリストの歴史などに言及した部分も面白い。2021/04/15
ヒラタ
1
「私がこれまで 最後の審判 の図像学をつづってきた一つの理由は、ボスの 快楽の園 をなんとか理解したいがためだった」新人物往来社から出版されている本の出発点的な本。知っていたつもりで実は知らなかった最後の審判が詳しく書かれていて読んで良かった。豆知識でミケランジェロが試みた工夫の一つが、システィナ礼拝堂の祭壇画は約24センチ前に傾いているとのこと、それによって画面にほこりがたまったりを防げるだけでなく、描かれた世界が迫って見える。なるほどです。2016/07/05