内容説明
日本人はなぜこの都に耽溺したのか?天を衝く摩天楼、繁盛をきわめる茶館、そしておびただしい娼婦、アヘン窟。「西洋の入り口」にして、国民国家の「破壊装置」。高杉晋作、谷崎潤一郎、村松梢風らの「上海体験」を通し、幕末から昭和に至る近代日本を捉え直す。
目次
プロローグ 二つの「上海」
第1章 サムライたちの上海
第2章 東アジア情報ネットワークの誕生
第3章 日本の開国と上海
第4章 「ロマン」にかき立てられた明治人
第5章 魔都に耽溺した大正作家たち
第6章 「摩登都市」と昭和
エピローグ 上海からみた日本
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
4
幕末人の西洋体験についてはしばしば語られるが、対象を「上海」に絞った事でかえって厚みと拡がりを持った。三国時代からの歴史を持つ上海。漁村から貿易港へ。近代に至り列強の租界地となり「近代化」地域と「旧上海」ともいうべき部分が生まれた。多くの漢訳洋書がここで宣教師により印刷されて幕末日本へ新知識をもたらす。そしてこの地で渋沢、杉浦、高杉、五代、井上らが受けた影響は。筆者は「中国の」「東北部」に生まれ、日本で博士課程を終え、北京で教鞭を執った日中比較文学の研究者、ということで、上海に対するほどよい距離感がある。2017/02/11
狐(beta)
1
また上海に行きたい~2018/07/02
しんかい32
0
著者があとがきで書いているとおり、幕末日本と上海の関係にやたら細かい記述がある一方、期待していた明治以降は駆け足でやや微妙。増補版では明治以降の叙述も増えているんだろうか。2013/05/25