内容説明
古代から中世への扉を開いた男、源頼朝。冷徹酷薄な政治家。人情あつき信仰家。二つの像に引き裂かれた「心の闇」は深い。本書は、その分身ともいうべき梶原景時や側近集団の役割に注目しつつ、一介の流人から、徒手空拳で鎌倉殿へと駆け登った、稀代の政治的人間の真実に迫る。
目次
第1章 平治の敗戦と配流
第2章 旗挙げ
第3章 神話復活の時代
第4章 政権掌握への途
第5章 梶原景時と頼朝の雑色
第6章 頼朝の死と景時
第7章 鎮魂の宮―鶴岡八幡宮
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鯖
15
古代と中世の狭間で、初の武家政権を開いた頼朝に精神面から迫る本。義満くらいまでいくと、神話や伝承を自らの権威付けに利用するんだなとこないだのヒストリアでの大江山の鬼伝説特集見てて思ったんだけど、手探り状態の頼朝はまだそういう余裕もないんだなと思った。北条氏も粛清した景時の祟りを恐れて、きっちり供養してるし。でも遷都まではしなかったんですね…、そうねそしてその澱みが鎌倉に溜まり続け…。2021/01/17
新父帰る
5
1998年版。タイトルに引かれて購入。著者の関心は頼朝の行動を、出来るだけ内在的に理解することに注がれている。依って単なる伝記でもなく、政治経済史でもない。その意味でも異色の本だと思って読んだ。頼朝、は一つは政治の為にはどのような犠牲も厭わない非常な魂と、もう一つは多くの人間を殺戮した己の罪業の深さと、それに対する神仏の祟りを恐れるという生身の人間の魂の二つの魂を持ち、それをどのようにして止揚したのかについて記述されている。流刑20年間の自己形成過程は残念ながら多く触れていない。史料が乏しいのだろう。2021/02/05
kenitirokikuti
0
源頼朝の伝説について。石橋山での敗走後、梶原景時に見逃されるのだが、八幡大菩薩の加護とか守り本尊の観音菩薩のお陰とか、霊験的なものも付随する。沙石集を書いたのが梶原の一族だそうな▲同時代の地方豪族、緒方惟義は三輪山伝承を引きずってたり、越智通清が大蛇の精で生まれたり、城長茂が三嶋明神だったり。2016/04/16
富士の鷹
0
鎌倉幕府を開いた源頼朝の事績とその行動原理についての著作。御家人制的仕組みを維持するた肉親であれ、敵であれ、ボスへの忠誠を第一としたこと。当時の人々には常識であったごとく、怨念を抱いて没した者たちへの鎮魂が鶴岡八幡宮造営の理由であること。また、平家物語の「逆艪」で有名な梶原景時の役回りなど興味深く読めた。2013/01/25
ブルーローズ
0
いろいろ言われている頼朝だけど、とにかくこれくらいしなくちゃ、世の中は変わらないってこと。2010/01/01