内容説明
春画が描いたのは「現実」ではなく、江戸人士の「性的幻想」である。春画はどう使われたのか?巨大な生殖器、豆男、動植物や小道具に託された意味とは?江戸の性、身体、象徴、窃視、空間システムなど、多方面から、美術史の一つの特異点を創造した江戸という時代の珍らかな顔貌を凝視する。
目次
序 大江戸春画トピアへようこそ
第1章 春画・セクシュアリティ・美人画
第2章 分節される身体
第3章 春画の中のシンボル
第4章 窃視の政治学
第5章 性と外界
結び この絵は勝ってはいけない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
∃.狂茶党
10
春画は片手で抑え、もう片方は別のところにあてがわれる。 エロ「商品」を通してみた、日本文化史は、ほぼ江戸の話題である。 江戸は一時期、三分の二を男が占める、文字通りの男社会、男の都であった。 夫婦というのは男から見る限り、貴重なものだったに違いない。2022/09/05
富士さん
4
再読。著者がイギリス人だからかどうかはわかりませんが、独特な視点を感じました。他の春画本がそれっぽい作品ばかりをあげているのに対して、本書の取り上げる作品が必ずしも春画と見られる作品だけにとどまらないのが素晴らしいと思います。“普通”の浮世絵と春画がフラットに連続しているという指摘は、ポルノグラフィーを囲い込んで安心しようという卑劣な心根を明るみに出してくれます。片や、図像学的な解釈が乱用されているように感じます。図像をどう解釈するかに当たっての根拠が十分に示されておらず、おいてけぼり感がありました。2015/06/26
たらら
4
春画は高尚なゲイジツでも当時の風俗を映したものでもなく、妄想と劣情のありようを描き出したもの、という視点からあらゆるものに春を見る。まさに春画を見る者の劣情と妄想を試すかのように、これは実は普通の絵のように見えるかもしれないが、実はここにこんな仕掛けがと深読み裏読み斜め読み。驚くべき数の資料と男色ものにきちんと目配りをしている点では春画観の変わる傑作であり奇書でもある。2010/03/26