内容説明
昭和十八年、柳田国男は日本という中心から放射状に広がる研究の輪、「大東亜民俗学」の建設を構想した。植民地主義の翳を色濃く帯びる東アジア諸国の民俗学を、柳田批判の視点から跡付け問いなおす意欲作。
目次
第1章 朝鮮民俗学の成立
第2章 柳田国男と「朝鮮」
第3章 「民俗台湾」の人々
第4章 南溟の民族・民俗学
第5章 幻の“満洲民俗学”
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
2
戦前~戦中にかけて、日本が勢力圏とした地域での民俗学を統合した「大東亜民俗学」を概観した本。各地で盛んに民俗学の研究が行われたが、それは治安対策(異民族を統治するために風俗習慣を知る)から始まったのだった 。朝鮮半島では檀君神話の扱いで日本人と朝鮮人の論争が起こり、台湾では先住民(いわゆる高砂族)を文明化する政策の指針となり、南洋諸島では"南の楽園"に憧れる日本人達が帝国主義の時代らしいロマン(自分勝手な)溢れる研究をしていた。最終的には日本に各民族の起源がある「大東亜民族学」が誕生するはず、だったらしい2012/08/04
user
0
朝鮮、台湾、太平洋、満州での「大東亜民俗学」の展開を手っ取り早くつかめる良書 2012/05/26
ROBART
0
「彼(秋葉隆)は真摯で篤実な「朝鮮」社会の"観察者"だったが、それは学問や大学という被保護膜に蔽われた上での観察調査なのであり、しかもそれは厳然とした"帝国"の権力によって支えられたものなのである。」2010/10/27