講談社選書メチエ
太平記「よみ」の可能性―歴史という物語

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  • サイズ B6判/ページ数 278p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062580618
  • NDC分類 913.435
  • Cコード C0391

内容説明

楠正成の物語。太平記よみの語りは、人びとの意識に、中・近世を通じ浸透する。忠臣か、異形の者か。語られてゆくにつれて正成はちがった顔を見せ、いつしか既存の神話、モラル、イデオロギーを掘り崩す。物語として共有される歴史が紡ぐあらたな現実。その奇妙なダイナミズムを探る。

目次

第1章 太平記の生成
第2章 もう一つの「太平記」
第3章 天皇をめぐる二つの物語
第4章 楠合戦の論理
第5章 近世の天皇制
第6章 楠正成という隠喩
第7章 『大日本史』の方法
第8章 正統論から国体論へ
第9章 歴史という物語

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

葉紗

3
『太平記』を読む行為が、日本の人々の心にどう影響したのか?ということを語った本。歴史ではなく、文学・哲学として「太平記」を見る本だと推察します。「忠臣」の教科書ともいうべき楠木正成、新田・足利の抗争に伴う武家政権のあり方、また、皇統についてなどなど、南北朝時代から連綿と受け継がれ、現代の日本人にですら根底に抱くものを指摘しています。とくに聖徳太子伝説に由来する「楠木正成」の人物像の造形と、彼に比喩される人物(由比正雪や大石内蔵助、吉田松陰等)像の造形の論は作者の気迫さえ感じさせられるほど熱が入っています。2014/08/31

印度 洋一郎

2
南北朝期を舞台にした軍記である太平記がいかに生まれ、その後の時代にどう読まれ、どのような影響を与えたかを考察。徳川幕府成立期には徳川氏の系図を源氏の新田氏に結びつける理論的バックボーンの一つとなり、江戸時代には太平記の中でフィーチャーされる楠木正成の後裔を僭称する由比正雪や、その忠臣のイメージをだぶらされる大石内蔵助が登場。そして、やがて尊皇イデオロギーを濃厚に漂わせる水戸学が成立する。又、近代には浪花節(江戸以来の兵学者も合流した)を通じ、忠臣大楠公が民衆文化として定着していく流れがあった2019/01/13

きさらぎ

1
鮮やかな論考で、つい一気に読んでしまった。理解できた範囲だが、<平家鎮魂でありかつ源氏政権の起源である「平家物語」>の源-平対立の軸をもって南北朝という時代を描こうとしながら、同時に草莽の臣である楠正成という、天皇と直結する「忠臣」を抱え込んだ「太平記」という物語の、<「天皇を戴く武家政権」という秩序を肯定しつつ、天皇と草莽の臣の直結という異質を抱え込んでいる>二重性の分析に立ち、忠臣蔵や水戸史学、近代史学、アジア主義、などにおける天皇制認識に斬り込んだ作品。もやもやしていたものが色々すっきりした。2014/05/01

いちはじめ

0
歴史が物語をつくるのではなく、物語が歴史をつくるという逆説。非常にスリリングな論考2000/01/31

gkmond

0
冒頭明治の教科書出てきたので期待したんだけど、明治以後の大衆道徳を楠正成がいかに縛ったかって話にはならなかった。まあそこまで守備範囲に入れろってのは酷か。歴史修正主義が跋扈する今読むと実証主義批判の箇所、もうちょっと丁寧に筆進めるべきでね? と思ったり。『「太平記読み」の時代』とセットで読むと面白さ増す感じ。源平交代史観をぶち抜いたのが水戸学天皇カルトって話は「ほえーなるほど」となり、想像のラインは白井聡の『国体論』に繋がった。2023/07/05

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