内容説明
近世初頭、東アジアをゆるがす一大事件が勃発した。壬辰・丁酉倭乱…。朝鮮半島を血に染めた、秀吉の野望のまたの名である。民族の記憶としてその惨禍は、両国民の心性に深く刻みこまれる。時代のうねりのなかで潤色される史実。天竺徳兵衛、論介、つむがれた多くの物語…。極限の文化接触=戦争を、歴史・文学の両面からとらえなおす意欲作。
目次
第1部 史実としての壬辰倭乱(東アジアの地殻変動;極限の文化接触)
第2部 文学のなかの壬辰倭乱(晋州城攻防戦;歌舞伎に登場する朝鮮の名将;朝鮮の妓生と日本の豪傑;深いひび―文学と国家意識)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
28
秀吉の朝鮮出兵が日本と朝鮮の両国に与えた影響を政治と文学・劇作品の面から研究した一冊。朝鮮側よりでまとめている点も面白かったが歌舞伎の天竺徳兵衛モノの設定への影響が興味深い。歌舞伎の天竺徳兵衛は異国の血を引く反逆のヒーローだが、父親が朝鮮出兵の際に第二次晋州城攻防戦で戦死した木曽官となっている。異国出身のヒーローというのが当時の創作物として物珍しく、設定も盛りやすかったようだ(ちなみに蝦蟇忍術の使い手であり、キリシタン(当時の創作物のキリシタンは=妖術使いのフラグ)でもある)。2023/08/27
富士さん
4
再読。文禄の役での晋州城の攻防戦をテーマに、文学を通じてその後の日本の朝鮮イメージを論じた本。朝鮮出兵についての本では、ひとつの戦いをこれだけ深く論じた本はないので、類書にない魅力があります。奴隷として転売された人たちの話は聞いたことがありましたが、朝鮮出兵で狩り集めてきた人たちがこれだけ広範囲に日本社会に定着していたことは知りませんでしたし、明軍の多国籍性の指摘も初耳でした。正直、文学の分析は解釈が先だっていて不満が残るものでしたが、そもそも江戸文学ので外国人の存在を知らなかったので、斬新でした。2021/09/04
可兒
1
朝鮮出兵の概略を述べるふりをして、朝鮮民族の英雄をたたえる本。勉強にはならない2009/10/24