雨の裾

電子版価格
¥1,771
  • 電書あり
  • ポイントキャンペーン

雨の裾

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 251p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062195218
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

病床の母に付き添う男。それに従う女。死を前に、男女を結ぶ因果の果て。情愛の芯から匂いたつ官能。古井文学の到達点。噪がしい徒然
若いころ熱心に読んだ本を読み返す男。文字を追う眼に映る、暮れかけた路地から庭をのぞきこむ人影。
踏切り
踏切は暗かった──。警報器が鳴り出したとき、前のほうにただならぬものを目にした。男の背後に忍び寄り、いきなり抱き止めた。
春の坂道
坂道をよたよとと、杖にでもすがるようにのぼっていると、うしろからぞろぞろと若いのがついてくる。俺のうしろに以前の俺が続く。その以前の俺のうしろからそのまた以前の俺が続く。
夜明けの枕
三十をすぎて司法試験を目指した男。アパートにこもり、一緒に暮らす女が働きに出て生活を支えた。
ほか全8篇

躁がしい徒然
死者の眠りに
踏切り
春の坂道
夜明けの枕
雨の裾
虫の音寒き
冬至まで


古井 由吉[フルイ ヨシキチ]
著・文・その他

内容説明

病床の母に付き添う男。従う女。死を前に、男と女を結ぶ因果の果て。情愛の芯から匂いたつ官能。表現は極北へ―最新小説集。

著者等紹介

古井由吉[フルイヨシキチ]
1937年、東京生まれ。東京大学大学院独文学専攻修士課程修了。71年、「杳子」で芥川賞、80年、『栖』で日本文学大賞、83年『槿』で谷崎潤一郎賞、87年、「中山坂」で川端康成文学賞、90年、『仮往生伝試文』で読売文学賞、97年、『白髪の唄』で毎日芸術賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 2件/全2件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Mishima

47
躁がしい徒然 、死者の眠りに、踏切り、 春の坂道、夜明けの枕 、雨の裾 、虫の音寒き 、冬至までの8編収録。いずれも幽幻がヴェールのように日常を覆っているような作風。死というものが生に含まれて、我々は生かされているのだ。「夜明けの枕」と「雨の裾」は漂泊する魂が触れ合いを求めている切なさが尾を引く。生かされている「生」を全うするため、孤独を噛み締めながら、一歩一歩、我々は歩んでいるのだ。2018/03/05

そうたそ

37
★★☆☆☆ 「ゴロウデラックス」で本人が朗読されていたのを見て、気になって読んでみたのだが、これはなかなか難しい一編だった。内容があるようでない、というかそもそもその文章自体が小説でありながら、随想のようにも感じられ、また時系列もあっちへいったりこっちへいったりと、個人的にはとっつきにくいという印象が残った一作だった。とはいえ、その文章の美しさは圧巻。物語としてはどれも短いのだが、「濃いなあ……」とつくづく感じ入ってしまう。何年か経った後にでも、再びじっくりと読んでみたい作品ではある。2015/12/10

踊る猫

30
死者と生者、過去と現在の間を自由自在に行き来して古井由吉は筆を走らせ続ける。エッセイにも似た歯応えだが、この著者はやはり小説という奔放なヴィジョンや記憶を試されるところで筆が冴えるようだ。例えばゼーバルトのような書き手と古井を対置して読めばどうなるのだろう。尤も古井の筆致は確かに読みにくいところがあり、私もこの一度きりの読書で全てが分かったと語るつもりも毛頭ない。老いを私自身が生きて、古井と同じように枯れた地点で読み返せばまた違った感想が見えて来るのかもしれない。季節が循環するような構成に心が落ち着く……2020/01/11

百太

21
純文学は、ちょっと辛い。純文学を語れる力が私には無いと痛感。目線が下を向いて「ん゛~ん」と唸る感想しか出ず。。。。。2019/02/19

かんやん

19
私小説というが、たしかに一人称で語られているが、「私」という人称が使用されるのは、一度ほど。心境小説というが、誰の心境なのか。「おのれをこの世の一個と限るよりは前世を思うほうが、すくなくとも人間智としては、よほど深いのかもしれない」のならば。(この国の人間は古来、世の実相を)「自分一個が生きながらえようと果てようと変わりなく、季節のめぐりにもひとしい、とみている」ともある。枯葉が夕日に照り返す、風にそよぐ、雲がうつろい雨が降りだすとき、それを見ているのは、誰なのか。いつ、どこでのことか。生と死の境が緩む。2017/06/19

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9727450
  • ご注意事項