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未明の闘争

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  • サイズ B6判/ページ数 539p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062184922
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

読むと、大切なものを抱きしめたり、眠ったり、セックスしたり、叫びたくなったり……今生きていることをを大切にしたくなる小説。「ずいぶん鮮明だった夢でも九年も経つと細部の不確かさが現実と変わらなくなるのを避けられない。明治通りを雑司ヶ谷の方から北へ池袋に向かって歩いていると、西武百貨店の手前にある「ビックリガードの五叉路」と呼ばれているところで、私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。」 これは『未明の闘争』の始まりなのだが、引き込まれながらも、違和感を感じ、いろいろと考え悩んでしまう人もいるだろう。著者の保坂和志さんが『未明の闘争』について書いているので触れてみたい。
《冒頭の段落で、「私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。」という文法的におかしいセンテンスが出てくるが、文章というのは記号としてたんに頭で規則に沿って読んでいるだけでなく、全身で読んでいる。だから文法的におかしいセンテンスは体に響く。これはけっこうこの小説全体の方針で、私はその響きを共鳴体として、読者の五感や記憶や忘れている経験を鳴らしたいと思った。》
鳴らされる。読み進めていると、無性に大切なものを抱きしめたり、眠ったり、子供の頃を思い出したり、セックスしたり、ジミ・ヘンドリックスの曲を聴きたくなったり、何処か知らない所に行きたくなるのだ。
 そして、この小説について、ある人はジョイスに匹敵するといい、また他の人はガルシア・マルケスに比肩するといい、いやいやドストエフスキーだと話す。それにしても、大作感溢れているのに私たちの近くにあるのはなぜか。もう一度、保坂さんの文章に頼ってみる。
《作者は作品の外にいる存在だから、作品に働きかけることはあっても、作品から働きかけられることはない──つまり作者は作品に対して神のような存在であり、作品に流れる時間の影響受けない、というのが普通の作品観だが、一年くらい経った頃から「それはおかしい。おかしいし、つまらない。」と思うようになった。》そうなのだ。3・11以降の日常と非日常がごちゃまぜになっている我々の本当にリアルな現実が目の前に登場してくるから常に新しいのである。そう、この『未明の闘争』は我々の物語なのである。 
 チェーホフ、ゴーゴリ、宮沢賢治、小島信夫……という文学や、セシル・テイラー、三上寛、ローリング・ストーンズ……という音楽に彩られたこの小説は、【今を大切にしたくなる本】の最高峰といえる。

保坂 和志[ホサカ カズシ]
著・文・その他

内容説明

やみくもに大切なものを抱きしめたり、ロッド・スチュワートが聴きたくなったり、眠ったり、子供の頃を思い出したり、セックスしたり、叫びたくなったり、何処か知らない所に行きたくなる、富士山と文学と音楽と猫と世界への愛にあふれた小説。

著者等紹介

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年、山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政経学部卒業。90年、『プレーンソング』でデビュー。93年、『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、95年、『この人の閾』で芥川賞、97年、『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

27
保坂ワールドは一作ごとに確実に進化/深化している。悪く言えばコアの部分はワンパターンでもある。女性をややエッチな視点から描き、野郎たちのバカさ加減を書き、猫を書き風景を描写する。その筆致は綿密を極めるが決して読みにくいわけではない。読みやすく、ややもすれば退屈さしか感じさせない部分を豊満な情報量を盛り込んだ文体で描き切り読ませる。今回の鑑賞で、やっぱり保坂の世界とフェミニズムは相容れないのではないか、と思った。助平さというかしみったれた欲望があからさまになるあたり、男性の私から読んでも馴染めないままである2022/03/21

Bartleby

16
読むのにとても時間がかかった。どこに行く時も持って行ってちびちび読み続けていた。途中退屈に感じることもあったけれど終わりのところではこのままいつまでも続いてほしいと思っていた。読んでいないときにもふと、本の中の人物や猫たち、あるいは彼らの言葉を思い出すことがあって、そうしたひとつひとつが自分にとっても懐かしい、大切な思い出のように感じられた。2013/12/08

Meme

15
始点から大きな円を描き始め、始点と終点がピッタリと合わさった感覚を最後の一段落で味わいました。人も猫も日常風景が中心です。時間軸も視点も行ったり来たり。柳春の霊魂あたりの話が分からなくて最高に面白かったです。短編映画として見たいですね、これは。2023/05/26

つーさま

14
どうもこの作品は普通の小説とは違う。冒頭からしてそうだ。<私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。>所々にこうした主従関係のおかしい文章が見られる。変なのはそれだけではない。ある時間の流れに異なる時間が何の前触れもなく注ぎ込まれ、しかも足跡だけ残して突然表舞台から消え去ってしまう。そのせいか分からないが、小説を読んでいるというよりかは立ち現れる場面場面に偶然居合わせてしまったような感覚がした。しかし、そんなただの通行人にも、うまく言葉にできない感情が不意に込み上げてくる瞬間が何度もあった。2013/10/12

フリウリ

11
いくつかのエピソードを細分化して、無作為に並び替えたような構成で、それらに意図があるように、ないようにみせているのですが、その構成自体が作為的(考え過ぎ)に感じられ、果てしない反復に付き合うのは、しんどかったです。自己言及的、タコツボ的な小説は好きですが、バットを振るなら振り切ってもらったほうが、付き合いがいがあると思いました。32024/01/19

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