出版社内容情報
「宗教はアヘン」から「指導者は聖人なり」へ。復権著しいロシア正教会と権力者プーチンの癒着と野合の果て、超大国はどこへゆくのか
「宗教は、なやめるもののため息であり、心なき世界の心情であるとともに精神なき状態の精神である。それは民衆のアヘンである」と若きマルクスが『ヘーゲル法哲学批判序説』で記したように、70年間の共産主義を捨て貧富の差が激化するロシアにおいて宗教の復興ぶりは著しいものがあります。
一時はオウムなどの新興宗教が勢力を伸ばしましたが、いまは旧来のロシア正教会の力が復活しています。プーチンがロシア正教会と在外ロシア正教会の和解を斡旋したりソ連邦時代に没収された財産を返還したりしたことによって、正教会は一種の財閥の観を呈しています。
カトリックと違い、かつてのロシア正教においてはピョートル大帝以降、総主教が廃止され皇帝(ツァーリ)が教会の首長でありました(皇帝教皇主義)。それは英国国教会の首長がイギリス国王であること以上の強い権力であり、人民(ナロード)にとってツァーリは神でした。
さて、なぜプーチンが正教会に対して融和的なのか……。すでに多くの教会ではプーチンを「聖人」とみなすイコンが掲げられはじめていると著者はいいます。その一方で強烈な反発も生じているとも。
プーチンとロシア正教の癒着、野合。それはソ連邦時代の個人崇拝の流れを汲みながらも、よりロシアの「古層」に根ざした権力アプローチであり、西側や日本のインテリによる「民主化」必然論を容易には寄せつけないものでもありましょう。
序 章 絶望のロシア社会
第1章 神権政治
第2章 “第三のローマ”復興のかげに
第3章 極東の愛国主義は高揚する
第4章 プーチンとは何者か
第5章 反プーチンの逆説
終 章 正教国家ロシアのゆくえ
【著者紹介】
1956年、島根県生まれ。学習院大学法学部卒業。同大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。政治学博士。島根県立大学助教授を経て、現在、筑波大学国際総合学類長・教授。専攻はロシア現代政治。著書に『東京発モスクワ秘密文書』(新潮社、のちに『ソ連の政治的多元化の過程』と改題して成蹊堂より刊行)、『ロシア市民―体制転換を生きる』(岩波新書)、『帝政民主主義国家ロシア―プーチンの時代』『虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たち』(ともに岩波書店)『ロシアはどこに行くのか―タンデム型デモクラシーの限界』(講談社現代新書)などがある。
内容説明
復権著しいロシア正教会と大統領プーチンの癒着と野合。その末に生まれた超権力の構造とは?現地を縦横に歩いて観察し、混迷する社会のゆくえを展望した異色のロシア論。
目次
序章 絶望のロシア社会
第1章 神権政治
第2章 “第三のローマ”復興のかげに
第4章 プーチンとは何者か
第5章 反プーチンの逆説
終章 正教国家ロシアのゆくえ
著者等紹介
中村逸郎[ナカムライツロウ]
1956年、島根県生まれ。学習院大学法学部卒業。同大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。政治学博士。島根県立大学助教授を経て、筑波大学国際総合学類長・教授。専攻はロシア現代政治(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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