内容説明
老中田沼意次、足軽の子と蔑まれ、名門譜代勢力から「賄賂政治家」の名を残されながらも、幕府の抱える難題に取り組む。国家の行方を憂えることもできないのか。狂歌師大田南畝、たいした仕事も、出世する見込みもない下級武士であるがゆえ、狂歌にのめりこみ、庶民の圧倒的支持を集める。才能を開花させることも許されないのか。二人の武士の苦悩と葛藤を、企業小説の名手ならではの視点で描き、現代と通じる「組織と個人」の問題を炙りだした著者初の歴史時代小説。
著者等紹介
高任和夫[タカトウカズオ]
1946年、宮城県生まれ。東北大学法学部卒業。三井物産入社。’83年に『商社審査部25時』を発表。以降、作家とサラリーマンの二足のわらじを履き続ける。’96年、国内審査管理室長を最後に三井物産を依願退職、作家活動に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シュウ
3
田沼意次のみた世界と松平定信のみた世界。紆余曲折があり落ち着くべきところに落ち着く、多大な犠牲を払う。組織に渦巻くそれぞれの思いは、交わることはない。ちょっと色々考えさせられる話ですね。2019/01/02
初美マリン
2
田沼意次と大田南畝を中心として、それぞれが志を、持ちながら、平賀源内を含め、自分を冷静に客観的視ている。結果は、蝦夷地開拓も幕府体制も途上であっても、それぞれやりきったのではないか、一人でできることではないと理解しやはり有能な人材は、たくさんいたのだなあと思いました2018/03/23
ほっしー
2
田沼意次の再評価が近年著しい。いきおい、松平定信の評価の下落が伴う。この小説もその流れの中にある。外交・防衛など国家レベルの対応には財政的・思想的背景が足りない幕藩体制の限界と、貨幣経済・商品経済の可能性を見通していち早く経済改革を志向した田沼の先進性は、時代に早すぎたと言うことだろうか。交わることのなかったはずの田沼と太田南畝に精神の共鳴を感じさせ、時代の空気をそこはかとなく描いた佳作と思う。2012/02/11
PIPI
2
最初読む気はなかったのですが、読み始めたら止まらなくなって。やはり、田沼時代は、文化の爛熟でおもしろい。狂歌は太田南保がおもしろい。2009/06/15
たかひー
1
★★★ 賄賂まみれの悪徳政治家という田沼意次のイメージが覆され真摯な姿に驚く。はたしてどちらの姿が本当なのか…。一方の太田南畝との対比で展開していくが、物語としての面白さはイマイチかなぁ。2019/06/05