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白暗淵(シロワダ)

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  • サイズ A5判/ページ数 280p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784062144599
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

静寂、沈黙の先にあらわれる、白き喧噪。さざめき、沸きたつ意識は、時空を往還し、生と死のあわいに浮かぶ世界の実相をうつす。言葉が用をなすその究極へ―。現代文学の達成、最新連作短篇集。

著者等紹介

古井由吉[フルイヨシキチ]
1937年、東京生まれ。東京大学独文科修士課程修了。1971年、『沓子』により芥川龍之介賞、1980年、『栖』により日本文学大賞、1983年、『槿』により谷崎潤一郎賞、1987年、「中山坂」により川端康成文学賞(単行本『眉雨』所収)、1990年、『仮往生伝試文』により読売文学賞、1997年、『白髪の唄』により毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

83
静寂と沈黙の行く末に見える生と死の狭間の世界が美しかったです。夢と現を彷徨いつつも、居場所は変わらずにあるような感覚がありました。それでいながら潜在意識の中にあるような幻想を見せてくるから不思議です。それは穏やかな日常の中にある見えないものなのかもしれません。老境に差し掛かる中での究極の言葉は、ある時突如として音を鳴らしたり無音になったりします。あくまで描こうとしているのは人間なのだと感じずにはいられません。恐怖にすら感じられる言葉の海に身を投げ出しているのが心地よい短編集でした。2016/12/31

syaori

56
連作短編集。例えば空襲があって意識を失う。眼の前にいた母が、次に目を開けた時には死んでいる。死んだことを知るのだけれども把握はできない。結局は母の死を理解するけれど、心の中に取り残されたものは残る。そんなふうに私たちの現実感覚のなかで取り残されてしまっているものを、作者は本書で様々に示しているように思いました。夢や前世や幽霊などの幻想的な体験として示されるそれは、しかし「それまでの経緯の紆余曲折の記憶の影」を潜ませて「うち顫えて」いて、その美しさと、それを掴んだときに得る「奥行」の予感に陶然となりました。2020/09/24

踊る猫

28
五感を総動員させて、古井由吉は世界を描き切ろうとする。冒頭の壺の内に沈黙を感じようとするところから始まって、古井にかかれば私たちの日常は古井が見た戦災の様子、及び戦後の発展と衰退の様子によって異化される。古井はかねてよりヴィジョナー/幻視者ではないかと思っていたのだが、ここでも(わかりやすい夢物語めいた「幻想」こそさほど出てこないが)古井のそういった体質は現れている。記憶しておこう、私たちの住む世界と同じものを見てこんな風に脳裏にヴィジョンを描き、言葉を繰り出すことによって更に骨太に磨き上げた作家が居た!2020/10/22

踊る猫

26
濃い読書体験を味わわせてくれる。時に筆は哲学的/思弁的に発展し、時に過去に遡行し時に女人の描写に走る。私たちの生活とすぐ隣り合わせにある狂気、もしくは日常の綻び。古井は書いているまさに「今ここ」に眼前している光景と過去のヴィジョン、あるいは想像上のなにかをトレースさせる。いや、ある意味ではあらゆる書き手は皆そうして小説を書いているのだ。だけれども、その重ね方というか重ねていく筆致そのものが晦渋であり、どこか自己言及的に自分自身を見つめている著者の眼差しの強烈さがある。内観を通じて著者は大いなる普遍へと至る2022/02/12

踊る猫

24
私たちは、自分の五感(視覚や聴覚、等など……)を通して世界を把握し、その主観が得た情報とそこから派生した解釈を言葉にする。逆に言えば、言葉で表現されるものは誰かの主観が捉えた思念の産物である。古井由吉はこの連作集でも相変わらず(失礼!)彼の五感を通して得た情報を主観の中で整理し、それを言葉で描き出す。女性との逢瀬、バブル期の狂乱、空襲の思い出、そういった古井由吉が見たもの・聞いたものは全て古井由吉というブラックボックスを通してひと連なりの文章に置換される。このスリル。この作家は一体どれほどの地獄を見たのか2021/01/28

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