壊れた脳 生存する知

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 258p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062122689
  • NDC分類 916
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「からっぽになった脳」を少しずつ埋めていく「成長のし直し」の記録!
3度の脳出血、その後遺症と闘う医師の生き方!
靴のつま先とかかとを逆に履こうとする。食事中、持っていた皿をスープ皿の中に置いてしまう。和式の便器に足を突っ込む……。なぜこんな失敗をしでかすのか、自分でもさっぱりわからなかった。

「何やってんだろう、私」
そう。高次脳機能障害の本当のつらさがここにある。おかしな自分がわかるからつらい。知能の低下はひどくないので、自分の失敗がわかる。失敗したとき、人が何を言っているかもわかる。だから悲しい。いっこうにしゃんとしてくれない頭にイライラする。度重なるミスに、われながらあきれるわ、へこむわ、まったく自分が自分でいやになる。――(第3章より抜粋)

本書は医学的にも稀有な、貴重な記録である。
本書の内省の対象は、自分自身の心の障害である。壊れた脳が作り出す、自分の心のほころびについて率直に語っている。言うまでもないことだが、心という現象は主観的なものであり、本人以外には経験できない。(中略)自分がどういう状態にあり、どんな手助けをしてほしいのかなどということを周囲に教えてくれるわけではない。本人自身が薄闇の中にあり、そんなことはできないのである。その薄闇にある自分の障害と向き合い、その内容を教えてくれるのが本書である。
――神戸学院大学人文学部教授 山鳥重 「解説」より抜粋

山田 規畝子[ヤマダ キクコ]
著・文・その他

内容説明

三度の脳出血、その後の後遺症と闘う医師の生き方。

目次

序章 壊れた脳の中、教えます
第1章 私は奇想天外な世界の住人
第2章 脳に潜んでいた病気の芽
第3章 病気を科学してみたら
第4章 あわや植物人間
第5章 世界はどこもバリアだらけ
第6章 普通の暮らしが最高のリハビリ

著者等紹介

山田規畝子[ヤマダキクコ]
1964年、香川県高松市に生まれる。東京女子医科大学在学中に一過性虚血発作と脳出血を起こす。「モヤモヤ病」の持病が発覚したが、後遺症もなく卒業。整形外科医として同大学附属病院に勤務。二六歳で郷里の大学病院に転勤、三〇歳で長男を出産。三三歳で父親が院長を務めていた山田整形外科病院の院長になる。三四歳のときの脳出血に脳梗塞を併発。「高次脳機能障害」となり、外科医への復帰は断念するが、高次脳機能障害のリハビリ医としての研修を兼ねて愛媛県の伊予病院に勤務。三七歳で三度目の脳出血を起こし、巨大血腫を摘出。さまざまな後遺症や薬の副作用に苦しみながらも、自ら考え出したリハビリで快方に向かい、今治市の老人保健施設の施設長として社会復帰を果たす。その後、夫と離婚、今後はひとり息子と二人三脚の暮らしをしながら、新たな側面から脳機能障害に取り組む予定
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

モルク

99
整形外科医だった著者が、学生時代から「もやもや病」をはじめ大きな脳卒中を3度乗り越え高次脳障害と闘いながら仕事に復帰(整形外科医ではないが)している。身体に麻痺が起こる、呂律がまわらないなど漠然と捉えていた症状を具体的に分かりやすく医者の立場患者の立場から説明している。アナログ時計を読む、階段を下りる、順序に並べるなどどういうことができないか不便は何かを書いてあるので参考になる。記憶障害も抱えながら仕事、子育て、執筆…-なんて前向きでバイタリティがあるのだろう。関連本も読んでみたい。2022/11/09

りんご

39
生きることはこんなに険しくて、尊くて、美しいものかと改めて思う。脳出血後の後遺症で高次の脳機能が障害されている「私」。この本のすごいところは障害を持つ者の主観と、知性を持つ者の客観の両方がちゃんと整理されてることで、ものすごく価値のある本なんじゃないでしょうか。整形外科医として働いていたが、34歳で脳出血に倒れる。短期記憶が保持できない、遠近感がわからない。自分に失望しながらも、医者としてこの未知の世界に夢中になる。「私」がわかったことは、【どんな脳でも必ず何かを学習する】ということ。壊れた脳でも。2022/08/10

Maybe 8lue

36
高次脳機能障害を医師である著者が、主観的に客観的に病態を語ってくれます。 知識はあるけど実体験のない医療従事者と当事者だけも知識のない患者の間に起こる摩擦を説明してもらえ、リハビリに関わる人にとっては一度読んでおくと患者の表現出来ない鬱積を受け止めてあげられるのではないでしょうか。2017/08/22

やっち@カープ女子

34
医師という病気を診るプロが自分の病気について客観視して書きとめている。大変な障害で苦労されただろうに、カラリと突き放した明るい感じの文章で読み手も励まされ感動する。12年前の発行だが今はいかがされているのでしょうか。2016/04/09

coco

19
モヤモヤ病、高次脳機能障害を経験された方本人が書かれた手記。 大変な状況にあっても、周囲の人に支えられながら前向きに生きる山田さんの姿に胸を打たれました。 本が出版された当時、小学生だった息子さんがとてもしっかり者の良い子で感心しました(T_T)お母さんに向けて伝えた「生きていてくれるだけでいいよ」という言葉に私もとても共感です。2018/07/03

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/126207
  • ご注意事項