内容説明
高木兼寛は、明治から大正にかけて活躍した医師である。当時、死病とおそれられた脚気の予防・治療法を確立するかたわら、無料でかかれる施療病院をつくり、病者の痛みのわかる医師と看護婦の養成を願って、医学校と、わが国初の看護学校をおこした。これら個人としては限界を越えるほどの多大な業績を一貫して支えたのは、医学を病者のものにしたいという彼の悲願であった。医の倫理が問われ、人間不在の医療が問題とされるいま、兼寛の生涯と業績を振り返りつつ、あるべき医療の姿を訴える。
目次
序章 南極大陸によみがえる高木兼寛の業績
第1章 戊辰の役で英国医学に出会う
第2章 英国セント・トーマス病院医学校に留学
第3章 脚気の栄養説を樹立
第4章 脚気の栄養説はやがてビタミン学説へ
第5章 研究のための医学から治療のための医学へ
第6章 病人に奉仕する医師の養成
終章 啓蒙者、求道者として生きた晩年