内容説明
名篇「自転車」「人生の一日」や「司令の休暇」「千年」を持つ、惜しまれて逝った著者の初期から昭和52年迄の全随筆から、海を愛し、読書を愛し、先輩・知友を想い、父と子を辿る、真摯にして豊饒な人間理解を追尋する阿部昭選エッセイ。自然であることを大切に考えた著者の秀れた人間考察。
目次
鵠沼海岸
あの夏あの海
断絶はあるのか―父と子
子供たちの戦争
子殺しの堕落
幻の先生
父の本箱
小説を超えるもの
国木田独歩がいた町で
海辺の人間〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
2
わりと最後のほうまで、文学論的な部分が印象に残る感じで読んでいました。「気まぐれに人みしりをしたり、勇気をふるって近づいたりしているうちに、言葉は私のものになる」(うらぎる言葉)、「私がいぶかるのは「自分を表現する」というようなすこぶる現代風の言いまわしにひそんでいる嘘についてである」(書くということ)、その他いろいろ。ただほぼ最後の表題作にきて、「父」について、「父と息子」についてが著者にとってどのくらい大きさのどんなテーマなのかに、一気に興味が移ったので、つまり『司令の休暇』を読む準備ができたようだ。2014/07/04