出版社内容情報
西脇 順三郎[ニシワキ ジュンザブロウ]
著・文・その他
内容説明
一九三三(昭八)年、英国留学後に上梓、幾多の詩人達に衝撃的影響を与えた日本語第一詩集『Ambarvalia』(「アルバルワリア」)。「旅人は待てよ/このかすかな泉に/…」ではじまる東洋的幽玄漂う長篇詩、一九四七年刊『旅人かへらず』。対照的な二冊に時に燿き時に沈潜する西脇順三郎の奔放自在、華麗な詩想とことばの生誕の源泉を見る。日本の現代詩最高の偉業二作を完全収録の文庫版。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
26
Ambarvalia:神の過剰が内容の貧困を物語っている。神々の名もギリシャの地名も横文字も感嘆符も、決してそれを覆い隠せはしない。 旅人かへらず:西脇は戦時中筆を絶ち、以後14年間沈黙を守った。その沈黙が詩心を結晶させたのではないか。この詩は、「花は何処へいった」の無限ループや「百年の孤独」の世界を想起させてやまない。 2016/12/31
Bartleby
13
久々に読み返してみたらけっこう西脇順三郎の影響力の圏内にいることに気がつく。むだに感情に訴えかけてこないところがいい。それでいてイメージはみずみずしい。そしてどこまでふざけているのか判然としないところがいい。彼の詩を読んでいるといつもなぜか柑橘類の味が口の中に広がる。「(覆された宝石)のやうな朝/ 何人か戸口にて誰かとささやく/それは神の生誕の日」2023/08/09
午後
6
「汝カンシャクもちの旅人よ/汝の糞は流れて、ヒベルニヤの海/北海、アトランチス、地中海を汚した/汝は汝の村へ帰れ/郷里の崖を祝福せよ/その裸の土は汝の夜明けだ/あけびの実は汝の霊魂の如く/夏中ぶらさがつている」 「旅人」p.942022/07/22
NагΑ Насy
5
むさし野を歩いた記憶やなにや。詩を読んでいて今はもうない風景に想いを馳せるような、帰らない旅人になったような。2015/02/25
Bevel
3
『遊園地の向方の/船舶の森に花が開く/株主がみんなよろこぶ/世界的正午』 という連に元気をもらった:「理知や情念で解決できない」はずの「幻影の人」がどうして自然の記憶からくるのか。「山のくぼみに溜る木の実に眼をくもらす」のは前原始から現在へと貫かれた徴であるのか。「旅人かへらず」は最初から蟠りを抱えているように感じる。そしてその蟠りは、セム教の無がもつ人格がここ以外の場所でそうであったように、ポジティブに解釈されつくすべきだと思う。2010/03/19