内容説明
若き日に内村鑑三に魂を奪われて、その著作を耽読し、キリスト教徒となった「人生の求道者」正宗白鳥は、師の中に「我執の人」を発見し、神を棄てる。しかし、老いて八十三歳、再度死への恐怖から信仰の告白をした。生涯、いかに人間生くべきかを問い続けた作家が、率直、真摯に綴った評伝「内村鑑三」「内村鑑三雑感」と「我が生涯と文学」「文壇的自叙伝」の代表作四篇。
目次
内村鑑三
内村鑑三雑感
文壇的自叙伝
我が生涯と文学
感想・レビュー
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yoyogi kazuo
1
いかにも白鳥らしく、かつての心の師である内村鑑三を突き放している。面白いのは、内村鑑三が晩年に熱心に唱えた「キリスト再臨説」について取り上げ、積極的に評価している点である。積極的に評価しているとはいっても、その内容に賛同しているわけではなく、内村が自らの信仰の論理的帰結としてキリスト再臨と肉体の復活という教えを信じるに至ったことに興味を覚えるというのである。内村のような人がキリスト再臨や肉体復活にしがみついて、その信仰から離れまいと努力している狂熱的信者の心境にある種の同感と共鳴を覚える、と白鳥はいう。2022/02/15