内容説明
梶井克也は人気コーラスグループ〈サモワール〉の主力メンバーだった。虚飾と悪徳の世界を逃れて日本を脱出し、ヨーロッパを放浪したあげくぼろぼろになってリスボンからその手紙を投函したのだ。そして始った愛が志穂子の無垢の魂に点火したのだった―。めくるめく恋への船出を描く宮本文学の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばきよ
36
病気ゆえに人格というか、感情を限定してきた主人公が18年を経て、社会というものに初参加することで、感情の限定を少しずつ解きほぐしていくと、結局そうなるかっていう結末。人間らしさというか、自由であるということを少しずつ取り戻し、体感していく感じだろうか。十数年ぶりに再読してそれなりに感慨深かったけど、もっとも心を動かされるのは表題の「ここに地終わり海始まる」という力強い言葉だったと思う。2013/09/21
ミカママ
21
あぁ、やっぱりそっちの男と?!笑 なんとなく後味の悪い作品でした。でもさすが、宮本作品、根っからの悪人がひとりも出てこないので安心して読めます。2012/04/01
エドワード
16
志穂子は徐々に世の中へ出て行く。その過程で、男と女、女と女、男と男、様々な人間模様に出会う。そして決して逃げない。迷いながらも勇敢に立ち向かうその姿は非常にすがすがしい。彼女の青春は始まったばかりだ。これからの明るい未来を感じさせて終わるラストシーンが良かった。2011/06/11
rikako
15
志穂子の成長物語かとおもいきや、梶井の成長再生の物語でもあるんだなぁ。誰かが動き出せば、その周りも動厳しい出す。そんな感じ。この後の志穂子が気になる!いいところで終わってくれるのが、さすが宮本輝さん。気になるけど、好きだ、この終わり方。2013/11/11
じいじ
13
ひと言で言えば、どん底からの再生の話。宮本作品にはたびたび「手紙」が登場するが、本作でも効果的な演出をしてくれる。たくさんある宮本輝の名作のなかでも、本作品は傑作の一冊であろう。遅読の小生がこの下巻は休まず一日で読了した。もう一度読み返ししたい一冊である。 おすすめ度:★★★(満点) 2013/11/24